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カテゴリー: Japanese

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日曜日のプレイリスト #006

今回、Apple Musicに入ってない曲があったため(時間差?)、Apple Musicのプレイリストは不完全です。Klinical, Killa P – Readyは別途チェックしてくれ~(YouTube

楽曲リスト&コメント

Luísa Sonza, MC Kevin o Chris – recadin no espelho

ブラジルで勢いを増している気鋭のシンガー、Luísa Sonzaのニューシングル。リオデジャネイロのファンキMCでソングライターのMC Kevin O Chrisが参加した、冷ややかでアトモスフェリックなファンキのビートがかっこいい1曲。Kevin O Chrisのやわらかな歌心あるパフォーマンスもあいまって、クールななかに親密さを感じるすごくバランスのとれたプロダクションで、このミニマリズムはポップなファンキともアンダーグラウンドなファンキともちょっと違った印象で、とてもいい。

DBN Gogo, Omagoqa, Baby S.O.N, Yumbs, Dee Traits, Dinky Kunene, Soul Jam – SKOROKORO

これは完全にaudiot909さんのリコメンドで聴いたもの。南アフリカのプロデューサー、DBN GogoのEP「Click Bait」の冒頭の1曲。シャッフルしたシーケンスにのるパッドやリフはまるで初期Floating Poitsみたいなフィーリングで、でもパーカッションのノリはアフロハウスな感じなのがすごくハマった。間違いないバンガー(昨年リリースされている)のSAdesFakSHenBenny Benassiの名曲(NSFWなMVでおなじみ……)をアマピアノにアレンジしたクレイジーな1曲でそちらもよい。

ところでこれきっかけであらためてアマピアノや3 Stepのプレイリストを聴いてたりしたんだけど、3 Stepって小節頭から「ドンドンドン……」って3拍入るようにも「ドン……ドンドン」って3つ目のキックが小節頭のアクセントになるようにも聴こえる気がする。

Little Simz – Mood Swings

Little SimzのサプライズリリースされたEPはベースミュージック系のプロデューサー、Jakwobとタッグを組んだ渋めのダンスチューン満載で、Infloと組んだアルバム群よりも好きだったりする。Drop 6も好きだったな。この曲はビートのパターンこそジャージークラブっぽいが、GqomのUK解釈がグライムとかと合流した流れ、ScratchaDVAとかを連想するようなダークさがすごくいい。

clear eyes – i’ll hold u

Marian HillのJeremy Lloydによるソロ・プロジェクト、clear eyesのシングル。ミニマルなビートに、パーカッシヴなアタックが強調されたストリングスやピアノのサウンドが構築する上モノが絶妙にマッチしている。おれ、こういう点がわさわさ寄り集まってるみたいな音に弱いのかも。

Tomggg, raychel jay – Sweet Romance

Tomgggさんの新曲はひさびさにLAのシンガーソングライターraychel jayを迎えた1曲。いつもどおりの弾力あるチャーミングなサウンドとテンション低めのリラックスしたヴォーカルのマッチングが素晴らしく、声のテクスチャを強調する平歌からリバーブがかかってボーカルがハモリだすサビまでの前半の流れがめちゃくちゃスムース。気づくとサウンドの世界に没入しているみたいなこういう導線のつくりはさすがだと思う。

RYUTist – 君の胸に、Gunshot

D.A.Nの櫻木大悟が提供した、暴れるシンセとクールなヴォーカルが溶け合うトランシーなRYUTistの新曲。『(エン)』でも相当尖ったと思ってたけど、ここまで行っていいのか? とちょっと不安になるレベル。これはパフォーマンスがめちゃくちゃ見たい。Wicked! Wicked!

Crystal Kay – That Girl

Crystal Kayまでジャージークラブやるの? と思ったがどうもこう、最近よく聴くポップ化した(ざっくりいえばBoy’s a Liar以後の……)スタイルというよりももっとオーセンティックな感じでちょっとナツいまである。とクレジットを確認すると、☆Taku Takahashiさんに加えてR3LLが編曲に参加。なるほど~。

ぶっ恋呂百花 – ぶっころにゃん♡

この曲をもって12ヶ月連続リリースを駆け抜けたぶっ恋呂百花。ジャンクなポップさで突き抜けてもいいところにちょっとetherealな雰囲気のドラムンパートが入ってくるあたりにキュートにも露悪にも単純に振り切ってやらんぞという矜持を読み込んでしまったりして。おつかれっした。3月にはリリパというか連続リリース達成杵パーティもあるらしいぞ。

Phocust, MIKESH!FT – Neon Flex

アメリカのプロデューサー、PhocustとMIKESH!FTによるシングル。めちゃくちゃチージーなコード感とメロでも馬鹿みたいなサウンドでエグいヨレ方したドロップになった瞬間に「これや~~~!!!!」となってしまうのでやっぱりメロディックなダブステップを聴くのはやめられない。ドロップのいかれたパターンは音の鋭さ含めてめちゃMIKESH!FT感があってそれもよし。

bastienGOAT – Beautiful Lover

オークランドのプロデューサー、bastienGOATのEP「NODE」から1曲。bastienGOATはフットワーク系の曲をやってるので知ったのだがもっと万能というかいろんなベースミュージックをごりごりやっており結構好きなプロデューサー。「Beautiful Lover」はバキバキに歪んだベースで聴かせるブレイクスでその潔さにぶち上がる。同じEPでは「That’s why they roll」もレゾナンスききすぎてびちょびちょになったシンベの気持ち悪さがクセになって素晴らしい。

Dabow – TRAPBELL

アルゼンチン出身のプロデューサー、Dabowのシングル。曲名のとおり、ベルのキンコンキンコン言うサンプルが印象的なトラップで、妙なサンプル一本で突っ切るミニマルさがぐっとくる。BandcampをのぞいたところHamdiのヒット曲「Skanka」のクンビア・フリップなんかやっててそれもよかった。

Klinical, Killa P – Ready

UKF DubstepのYouTubeチャンネルで聴いてかっけ~となって選曲。ダビーでスモーキーなゼロ年代のダブステップのフィーリングを蘇らせつつ、サウンドのビッグさはもっと現代的な感じで、世代的にぐっときてしまう。Klinicalはどっちかっていうとドラムンベースもともとやってたのが140くらいのノリになってきたっぽくて、そういう流れなのか~と思った。

HIJINX – Swarm

もともとMr.K名義でダブステップをリリースを重ねてきたブリストルのプロデューサーで、心機一転名義を変えてHIJINXとして2021年から活動を開始。Alix Perezの1985 MusicからリリースしたばかりのEPから、ベースのニュアンスの豊かさと軋むようなウワモノのグルーヴがかなり楽しい1曲。最近盛り上がりつつあるのもあって、2010年代のダブステップをさらっておこうかしらという気になってくる。

Sully, Sãlo – Nights (Edit)

以前Basic Rhythmとのスプリットから紹介したことがあるSullyのシングル。歪んだ808のサブベースの存在感はもちろん、スネアや金物、あるいはところどころに挿入されるパーカッションのテクスチャの豊かさはある種ユーモアを感じて、やっぱりこのひとすごい好きかも。とか思う。今回選曲したのエディットバージョンだが、シングルは3月1日にリリースとのこと。

宮本フレデリカ (CV:髙野麻美), 速水奏 (CV:飯田友子) – ミステリーハート (GAME VERSION)

先日行われたデレマスユニットツアーの山形公演でライヴでは初お披露目となっていた、ユニットFrenchKisSの新曲「ミステリーハート」。PandaBoYのプロデュースによる洒落た2ステップで、フレちゃんの歌声にぐっときてしまう(奏さんの歌唱も好きだけど)。

Creepy Nuts – 二度寝

なぜこんなにジャージークラブをやるんだDJ松永。と一瞬思ったけど、まあジャージークラブうんぬんというのはある意味では表層的というか、キックのパターンこそジャージーっぽいがそう一筋縄でいくものでもなく、バックビートにスネアをきっちり打ってどっちかっていうとエイトビートのロック的なニュアンスをうまく混ぜているところにDJ松永のプロデューサーとしてのうまさを感じる。ちょっと泣き入る感じのギターをうすく被せる感じとか、日本で売るポップスとしての勘所(日本で売る、は必ずしもドメスティックで閉じている、を意味しないのであしからず……)を抑えているだろう。オーセンティックなヒップホップやジャージークラブとしてどうかというよりは、その折衷性にこそ聴くべきところがあるのでは。

Nubiyan Twist, Nile Rodgers – Lights Out

ロンドンの大所帯アフロジャズバンド、Nubiyan Twistが5月にニューアルバムをリリース。そこからの先行シングルで登場したのはNile Rodgers。アフロビートのニュアンスは抑えて、4つ打ちのディスコ・テイストを強調した前半ではNile Rodgersが大活躍しているのだが、終盤ではドラムのパターンをはじめバンドのアンサンブルがNubiyan Twistらしいアフロ・ビート的なグルーヴになだれ込んでいく。この展開はアツい。そこに改めてNile Rodgersのカッティングが登場して、アフロビートとファンクが邂逅。満足度高し。

OKAMOTO’S – カーニバル

OKAMOTO’Sのシングル「この愛に適うもんはない」のカップリング曲なんだけれど、めちゃくちゃフォーキーで染みるメロディがクセになる。展開含めてなんかくるりみたいだな……と思ったりして。再生すると思わず聴き入って、最後まで聴き通してしまう。

Sweet William, 中山うり – スイカ

Sweet Williamの3年ぶりとなるアルバムに収録された、中山うりをフィーチャーした洒脱な歌モノ。ハットを抜いたキックとスナップだけのシンプルなリズムパターンを補うように配置されたサウンド(パーカッションもさることながら、アコギやピアノも)が、非常に簡素な印象の音像のなかでおもいのほか緊密に組み合わさっているのが良い。ループ感が強いようでいて、意外なほど「展開」していて、イージーに聴けるけど巧みなクラフトで成り立っているな……など。

Faye Webster – Feeling Good Today

オートチューンによる2声のハモリが印象的なFaye Websterの新曲。1分半にも満たない小品で、ほぼギターの伴奏だけ(アウトロにピアノが登場する)というカジュアルさながら、そのカジュアルさゆえに輝くものがある。素晴らしい。

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カル活ダイアリー(2月3日、4日、7日)

2月3日

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS UNIT LIVE TOUR ConnecTrip! 山形公演(やまぎん県民ホール)を見た。デレマスのライブは昔ライブビューイングで見たきりで、現地参加ははじめて。近くの駐車場に乗り付けてやまぎんホールに向かうと、アイドルのハッピ着てタオル持ったおたくが広場に押し寄せていて迫力があった。おれはグッズ関係なにひとつ持ってなくて、逆にちょっと恥ずかしかった。気合の入ったおたくにたいする引け目、ありますよね。

開演前BGMには、山形出身アイドル辻野あかりのソロ曲が流れて会場ぶち上がり。いい曲だね。

うちはりんご農家でもあるので山形りんごがフィーチャーされるのはうれしいが、山形といったらむしろさくらんぼやラ・フランスではないかという思いもなくはない。

3階席最後列という席ガチャハズレな感じの場所だったけど、そもそもホールがそんなに広くないのでぜんぜん気にならなかった(オペラグラスはやっぱり欲しかったが……)。というかこんな場所でデレマスのライブ見れるのやべ~って感じで、なんとも贅沢な時間であった。80分とか90分だったかな。タイトだけど濃密なセットリスト。

まあいろいろ楽しかったのだが(MCとか)なによりイノタク曲を存分に楽しめたのがよかった。かねてから生涯ベスト、世界で一番いい曲と公言してきた「クレイジークレイジー」を生で聴けたし、「Radio Happy」も見れたし、「Hotel Moonside」も見れた。思い残すこと、なし。生で動くあやっぺを見れたのもよかった。

ただ、やっぱりペンライトを振って盛り上がるというのがなかなかよくわからない。後半になってようやく掴んできたけれど。あと4つ打ちで手拍子起こるのはいいけどみんな走りすぎてて「ちゃんと音を聞いて!」と思った。でも手拍子って意外とむずかしいよね。おれも上手にできる気がしない。

2月4日

山形駅西口のレコ屋RAF-RECに食品まつりさんとTaigen Kawabeさんが来るというので見に行った。食品さんの『Yasuragi Land』には日本盤ライナーを書いていて、インタビューもリモートでしていたのだが、対面ははじめて。『Yasuragi Land』にも参加していたTaigenさんとあわせて、きちんと挨拶できてよかった。食品さんはラップトップとSP-404 Mk2とRoland E-4でパーカッシヴだけどビートレスなトラックとヴォーカルというか声のパフォーマンスを組み合わせたライヴで凄まじかった。なんかもう、「熱唱」というかんじで。SP-404に仕込んであるネタはゲーム機のサウンドロゴばかりでそれもとんでもなかった。Taigenさんのパフォーマンスはラップトップからトラックを流し、足元のエフェクターを操りつつヴォーカルを披露するスタイル。セットアップはめちゃくちゃミニマルなのにオーラとパフォーマンスでスペクタクルにしててすごかった。そのままフリーなセッションに突入して謎の狂騒を経て幕を閉じた……。

2月7日

東北芸術工科大学の卒展がはじまったので見に行った。印象に残った人をいくつか。

美術科洋画コースの木村晃子さん(note)、道端に投棄されるし尿入りのペットボトルを題材にしたモキュメンタリーとインスタレーション(《Golden PET Bottle》)、露悪といえば露悪なんだけどアウトプットがスマートで、でも適度に俗っぽい(モキュメンタリーというアプローチ自体が持つ俗っぽさ)。ただテレビとかYouTubeみたいなメディア/プラットフォームではキャッチしきれなさそうなつかみどころのなさもある。

大学院複合芸術研究領域の横田勇吾さん(ポートフォリオサイト)、たしか学部の卒制で作品を見ていて印象に残っていたのだが、そのときよりもテーマが地に足ついていたと思う(うろ覚えだけれど)。ストリートダンスの経験に基づきつつ、ダンスの身体性に加えて、身体の外部(空間、時間、リズム)とどう関わっていくかを突き詰めた結果、ある種のコンテンポラリーダンスみたいな問題意識(日常の動作とその身体性、サイトスペシフィシティ)とパフォーマンスになっているのが面白かった。ストリートからのコンセプチュアリズムってめちゃかっこよくないすか。

大学院芸術文化専攻絵画領域の小林由さん(Instagram)。この人もストリートダンス経験をもとに制作しているのだそうだけれどがっつりペインティング。ダンスの経験はモチーフのレベルでも明確だけれど、方法のレベルにも入り込んでいる。描いた絵を裁断してミシンで再構築して、フレームに不定形なままはりつける。コラージュ的な造形もヒップホップっぽいけど、このフレームからはみ出したりフレーム自体がいびつだったりするところも、あの種の音楽が持つ歪みや断絶(トリシャ・ローズ的な)の具現化っぽくて面白い。帰ってから、小林さんも卒展で見てたのに気づいた。でも卒展のときよりも方法面でも造形でもキャッチーで強いと思う(モチーフの選択が若干ベタすぎる気もしないでもないけど好みの問題ではある)。

美術科洋画コースの塩原唯菜さん(ポートフォリオサイト)。描いているモチーフ自体はキャラクターっぽいというかイラスト的なアプローチなんだけど、線に物質性をもたせる方向で構成された画面がすごくよくて、正方形のフォーマットもばちっとハマっている。素朴にもっといっぱい見たい。

ここ数年で見たなかでも面白かったような気がする。コロナ禍で制限が厳しかった時期に制作・発表せざるをえなかった頃を越えて、学生生活がはじまる頃にコロナ禍が本格化して、その環境を前提に制作するようになったからだろうか……とか思った。

ちなみに芸工大ついて車停めてひといき着いてたら目の前を卒展見学にきていたとおぼしき学部生時代の恩師が通りがかり、「えっマジで?」と思いつつ急いで車を降りて勇気を振り絞り声をかけたところ、結構ちゃんと覚えられていた。14,5年ぶりなんじゃないかな。

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[Soundmain Archive] Nao’ymtインタビュー 自身を「解放」する、R&Bからアンビエントへの道のりと創作の思考法 (2022.08.05)

安室奈美恵や三浦大知のプロデュースワークでも数多くの人気曲を生み出し、自らヴォーカルをとるソロアーティストとしても知られるNao’ymt。そんな彼はここ数年、2014年リリースのソロ作『矢的直明2014』収録曲をリメイクする「Reinterpretation」シリーズや、ヴォーカリストとのコラボレーションを始めとして、旺盛にソロ活動を展開してきた。

Nao’ymtのサウンドを特徴づけるのは、ダンスミュージックの高揚感や、ヴォーカルミュージックとしてのR&Bのスウィートさを芯に持ちながら、さまざまな質感を湛えたシンセやポスト・クラシカル的な音使いでアンビエントに接近する折衷性だ。プロデュースワークでももちろんその片鱗を感じることができるが、もっともそのユニークさが直にあらわれているのは、やはりソロだろう。今回のインタビューでは、具体的な制作プロセスから音楽的な影響源、そして名作・三浦大知『球体』への思いまでを伺うことができた。ストイックさと音楽への愛が同居したような語り口のニュアンスが、テキストでは抜け落ちてしまうのが残念だが、少しでもそれを感じてもらえればと思う。

Nao’ymt「月暈」(2020)

「感謝の気持ち」としてのReinterpretationシリーズ

2020年、新型コロナ禍が始まって、音楽業界にも様々な変化があったタイミングで、ソロでのリリースが活発になりましたね。『矢的直明2014』(以下『2014』)の収録曲をリメイクする「Reinterpretation」シリーズを始めとして、このタイミングでソロ活動に力を入れるようになったのはなぜでしょう。

前々から、『2014』や三浦大知くんとの『球体』で追求した「アンビエント+ダンスミュージック」を自分のソロでもう一度やってみようかなと思っていました。自分の中で大事にしている音楽性がずっと続いていることを伝えたかったんです。そこに奇しくも新型コロナ禍が起こって、自分の制作に集中する時間が確保できたことはきっかけのひとつでした。『2014』を買って聴いてくれた方への感謝の気持ちも大きいです。聴いてくださった方には、元を知っているからこその楽しみ方をしてもらいたいなと。

初めはもっと気軽に、ちょっと手を加えて歌い直すくらいのつもりだったんですが、元のプロジェクトファイルを自分で見てもわからないことが多くて。それに、自分のプロジェクトではプラグインをあまり使わず、実機のシンセサイザーを弾いていることが多いので、まったく同じ音は2度と出ない。がらっと作り変えようとも思ったんですが、連続性の部分がわかりづらくなってしまうので、元の楽曲に合わせて、改めて音を作っていきました。

Nao’ymt『矢的直明2014』(2014)
Nao’ymt「Sunrise (Reinterpreted)」(2021)

「Reinterpretation」のヴォーカルはどれも再録ですよね。原曲と比べると、メインのボーカルラインに加えて新しくハモりが加わっていたりします。

『2014』は普通の部屋でヴォーカルを録っていたので、反響の面でもあまり声を出せなくて。「Reinterpretation」では半分くらいスタジオを借りて録音したので、より歌にスポットを当てることができました。簡単なものとか、大きい声を出さなくていいものは、家で録ったりもしました。

ソロワークならではの実験が作りだす理想のサウンド

具体的に楽曲についてもお聞きしたいと思います。個人的に気に入っている曲のひとつが、「Irreplaceable (reinterpreted)」です。元曲も好きだったんですが、特に空間の作り方がすごく鮮やかになったように感じました。

Nao’ymt「Irreplaceable (reinterpreted)」(2020)

いつも曲を作るときにはまず映像が見えるんです。「Irreplaceable」のときは、車で走っているときに目黒通りで古くて小さな教会を見つけたんです。そのとき、教会の中に人が座っていて、膝の上にかけたブランケットの上に葉っぱが一枚落ちてくる……そういう絵がパッと浮かんで。その時にこの曲が浮かんだんです。異世界感のある、ノスタルジアの感じられる曲。それを再現するために、基本的に素材はテープに1回録って、そのテープに録った音をまた戻して使っています。Sequential Prophet 12やRoland JUNO-106の音をテープに録って、それを戻す、っていう。昔eBayで買った、Uherという古いオープンリールのテープレコーダーを使いました。

そういったガジェットは普段からよく探していらっしゃるんですか。

はい。でも、7割失敗しますね(笑)。でも3割は当たりというか。ほんとに1曲の中のワンフレーズだけかもしれないですけど、「これがあったからこの音が作れた」という喜びがあるんです。仕事のときは修正がなるべくしやすいように配慮するんですが、自分のときは、そういう好き勝手な実験ができる楽しさがありますね。

ハードウェア以外にも、プラグインで重用しているものはありますか。

U-heのシンセがすごい好きで、ZebraやReproをよく使っています。特にZebraはパッドがすごくいい。有名なシンセですが、Spectrasonics Omnisphereもよく使います。ミックスで絶対使うのはFabFilterのProQシリーズとWavesのRenaissance Compressor。Wavesのプラグインは、老舗の安定感があるのでなんだかんだでよく使います。また、アンビエント曲では、AudioThingのWiresやWavesfactoryのCassetteなどを味付けで使用することもあります。DAWはAbleton Liveをメインで使っていて、歌とミックスはAvid Pro Toolsで行っています。

ご自身でミックスも手掛けられていますが、自分でやることにやはりこだわりがあるのでしょうか。

あんまりないですね。頼みたいんですけど、それはそれで大変なので。ちょっと特殊な音の使い方だったりすると、「どう説明すればいいんだろう」みたいな……。だったら、自分でやった方が力作になるかなと思って、日々すごく頑張って勉強してます。正直、作るのはすごく好きですけど、ミックスはそうでもないんです。作るのとは頭の使う場所が違うんですよね。

固定観念に囚われず、自分の表現を「解放」する

「Reinterpretation」以外の楽曲についても伺えれば。個人的に、2020年のシングル「落葉」がとても好きな一曲です。ビートレスで、パッドとピアノが中心になった前半に、提供楽曲ではあまり聞かれないNao’ymtさんの作家性を強く感じます。

Nao’ymt「落葉」(2020)

実は、この曲が一番最初に思い浮かんだときは、アカペラだったんです。だから、全部アカペラで行きたいなと思っていたんですけど……。

ソロ活動でいま目指しているのが「解放」で。やっぱり仕事で音楽を作っている影響で、自分の気持ちを解放するのが難しくなっちゃう。「キャッチーにしなきゃ」「もっと分かりやすくしなきゃ」みたいな意識が働いちゃうんですよ。例えば、自分は着物がすごく好きなんですね。でも、着物を着て、今から渋谷行ってくださいって言われたら、ちょっと恥ずかしい。曲作りでも同じようなことがあって、「アカペラはちょっと……」みたいに思っちゃう。だからパッドを入れちゃったんですけど。

かなり「Nao’ymtらしさ」が出ていると思っていたので、まだ突き詰めたい部分があるんだと聞いてちょっと驚きました。

そういう、攻めたいのに攻めきれない自分の不甲斐なさは常にあります。今のうちに言っておきますけど、もっと行けるんで!(笑) この先、もっと解放していくので。

後半でゴリッとしたビートが入ってきますが、こういった展開のひねりは作っているうちに湧いてくるんでしょうか。

もう、展開まで最初のインスピレーションでできています。あとはそれに耳を傾けて、手繰り寄せて、音にしていく。大体80パーセントは見えてますね。残り20パーセントは、作りながらもっといいのが出てきちゃうことがある。自分の曲で展開が飛んだりするのは、まさに映像から来ているのが理由なんです。映像が変わったら、かかっている音楽も変わるという感じ。音楽はループが前提で、1番・サビ・2番・サビ・大サビ、みたいになっているものですけど、映像は起承転結で進んでいきますよね。作り方が映像寄りなんです。いまは、「サビを一曲のなかで繰り返す必要があるんだろうか?」と思い始めています。

この曲のように、リズムを強調するよりはパッドの音色などを聴かせるようなアンビエント的なサウンドについて、インスピレーションになっているミュージシャンの方はいらっしゃいますか。

いろんな方から受けた影響の上に自分の音楽があるのは確かですけど、例えば「この曲はここからの影響」っていうのはあんまりないんです。今まで培ってきたものがじわじわ出てきて、自分の音楽と触れ合っている。ただ、Sigur RósとかBjörkが大好きで、アンビエント系の曲にはその影響が表れているかもしれないです。他にも、同じアイスランドのJóhann Jóhannssonとか。どんな影響を受けているか、あまり深く分析したことはないんですけど。

Jóhann Jóhannssonのアルバム『Orphée』より「Flight From The City」(2016)

Nao’ymtさんといえばもちろんR&Bが大きな影響源にありますが、それ以外からの影響も大きそうだなと思います。

初めはUSのポップスから始まって、ロックを経て、R&Bを聴きだして……。作っていたのがR&Bだったこともあって、ほぼR&Bだけを聴いている時期が一番長かったですね。それが、自分の感じている気持ちをR&Bじゃ表せないと感じ始めて、色んな音楽をもっと深く聞くようになりました。そこでSigur RósやJóhann Jóhannssonにビビッときて、自分の中で融合させ始めたんです。

プロデューサーの視点から振り返る、安室奈美恵と三浦大知

ご自身も素晴らしいヴォーカリストですが、自分でヴォーカルをとれるということが、制作の上で強みになっていると感じることはありますか?

ありますね。提供する曲でも、仮歌を結構きっちり、このまま完成してもいいくらいまで作るんです。「聴いた通りに歌ってください」と言えば、いちいち言葉で説明する必要がない。それがすごく助かります。たとえば、自分の歌詞は韻をすごく大事にしているので、あえて言葉を変なところで切ったりするんです。普通に歌っても成立してしまうのだけれど、仮歌を聴いてもらえば、そこが切れてる、ブレスしてる、というのをわかってもらえる。自分みたいに作って歌っている人が提供する時は、多分皆さんそうだと思います。結局、自分で「こういう曲にしたい」と思って作って歌っているわけなので、仮歌と最終的な歌が全然違うってパターンはあまりないと思います。

とはいえ、実際に歌入れしてもらったときのマジックもありますよね。

素晴らしいシンガーの皆さんとお仕事しているので、いつもマジックです。特にその人の声が初めて乗った瞬間、一声目で「うわっ」てなったのは安室奈美恵さんでしたね。同じ言葉で同じメロディーなのに、伝わるメッセージの質が違う。

他にも、R&B的な観点で言うと、リフズ・アンド・ランズ(いわゆるフェイク)という、あえて崩す歌い方がすごいのは、やっぱり三浦大知くん。仮歌でもフェイクの部分は全部崩して歌って、ガイドを作ってあるんです。大知くんはそれを聞いた上で、最終的には結構変えてくる。大知くんならではのフレーズになるんですよ。R&Bのシンガーって、その人のフレーズがあるものなんです。タンクだったらタンクの、マライア・キャリーだったらマライア・キャリーのフレーズ、みたいに。それを持っているというのは、R&B好きとしてはすごく嬉しいんですね。

三浦大知「Backwards」(2018)。Nao’ymtが作詞・作曲・プロデュースを手がけた。

ちょうど三浦さんの名前も出たので、三浦さんとお二人で制作した『球体』についても伺いたいと思います。Nao’ymtさんも自ら代表作として挙げられている作品で、個人的にも大好きな作品です。2018年夏のリリースから4年ほど経った今から振り返って、改めて『球体』にどんな思い入れがありますか。

三浦大知『球体』(2018)。全曲Nao’ymtがプロデュースを手がけた「コンセプチュアルプロジェクト・アルバム」

3年以上かけてひとつの作品に向き合うことができたのが一番大きいです。しかも、それがすごく楽しい時間で。PCMレコーダーを持っていろんなところに旅したり、海に行ったり山に登ったりして、いろんな音を集めて、それを元に曲を作って。自分の中では、売れる・売れない、評価される・されないとかいう次元じゃなくて、世に残せたということ自体に意味がある作品です。

もう毎日楽しかったですよ。何をやっていても楽しかった(笑)。晩ごはんを食べていても、「あの主人公はあの後どこ行くかな」とか、「あのシーンでどうやってなんて言うかな」とか、もうそんなことばかりずっと考えてました。『球体』で描かれるストーリーの中に鉄橋が出てくるんですけど、自分の理想に近い鉄橋がどこかにあるんじゃないかと実際に探しに行ったり。わざわざ新幹線に乗って、ぴったりの鉄橋を見つけたら、その下に行ってレコーダーを回して、電車ががたんがたんと通りかかる音を録音して。「おかえり」という曲には、そうやって3年間かけて録った音がSEとしてたくさん入っているんです。春の音、夏の音、秋の音、冬の音を集大成としてあそこに込めていて。そんな作品、なかなか作れない。

ヴォーカル×ダンスパフォーマンスの可能性を追求することが念頭に置かれた『球体』。アルバムの発売に先立ち「”完全独演”公演『球体』」が全国7都市で開催された

しかも、それを稀代のエンターテイナーである三浦大知くんがこれ以上ない形で表現してくれた。独演のステージを観たときに、すごく腑に落ちたんです。音楽が好きで、3歳からピアノを始めて、いろいろな経験を経て、ここにたどり着いた。ひとつの着地点みたいなものを感じましたね。

実は、制作しているとき、「この作品は人々に受け入れてもらえるだろうか」と大知くんにぼやいたことがあって。大知くんは「それは自分がエンターテインメントにします」って言ったんですよ。「エンターテインメントにできるんで、大丈夫です」って。めっちゃかっこいい! と思って(笑)。深夜のコンビニでの話です。それで自信を持って、弱気にならずに行けたんです。

「名刺」がわりのソロで未来を作る

現在、シングルをハイペースでリリースされていますが、また『2014』や『球体』のように、アルバムを制作する予定はありますか?

そこはいますごく悩んでいますね。まとめたいんですけど、繋がりがない曲を集めたアルバムになっちゃうのは嫌なんです。今の時代だからこそ、アルバムとしての意味が大事だなと思っていて。もし、アルバムを出すとしても、今までのリリースとは切り離したものになるかもしれません。

リスナーとしては、「次にアルバムが出るとしたらどうなるんだろう」と期待してしまいます。Nao’ymtさんご自身としては、そうしたアルバムに対するプレッシャーはありますか。

あまりありません。ソロだから、成功しようが失敗しようが自分の他に誰も傷つかない。そこは楽ですよね。 むしろ、どなたかに提供した作品となると、責任があるなとは思います。

2022年現在、作家的に楽曲を提供する仕事と、ソロとしてのリリースの両輪で活動されていますよね。意識的にそのバランスをとることはしますか?

いや、それはもう全然。単に、音楽作るのがほんとに大好きなんで、常に作っていたいんですよ。仕事が来たらそのために作るし、仕事がなかったら自分のために作るしっていうだけです。

今は、ソロ活動がいわば名刺みたいな感じなんです。「こういう感じの曲いいじゃん」って思ってもらって、そういう仕事が来たらいいなと。仕事だから、ソロだから、っていう風にはあんまり考えないようにしてます。最終的には、仕事もソロもひとつになったらいいなと思っています。

取材・文:imdkm

Nao’ymt プロフィール

東京都千代田区出身。独自の世界観で全てを包括する音楽家。
1998年にR&Bコーラスグループ“JINE”を結成。2004年よりプロデュース業を本格的に始め、三浦大知、安室奈美恵、lecca、AI、他、数多くのアーティストに作品を提供している。
特に三浦大知の多くの楽曲を担当。中でも、2018年7月リリースのアルバム『球体』は、アルバムコンセプト含め全16曲の作詞作曲・プロデュースをした出色の出来である。
また、安室奈美恵に関しては、ヒットシングル「Baby Don’t Cry」「Get Myself Back」など、これまで28曲を担当。小室哲哉以降もっとも多くの曲をプロデュースしている。

https://naoymt.com
https://www.instagram.com/naoymt/

ニューリリース「Japanese Summer Lost」

遠い昔、日本の夏、人々はどのような風景を見ていたのでしょうか。
そんなことを思いながら作りました。(ご本人のTwitterより)

各種プラットフォームでの配信はこちら:
https://orcd.co/japanesesummerlost

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日曜日のプレイリスト #005

d.silvestre, Mc Lv Da Zo, MC João Da Z.O – Tralha da Fac

The FADERのバイレファンキ特集記事でもその名がフィーチャーされていたd.silvestre。ダークでノイジーでエネルギッシュ、でもミニマルな構成にはスマートさも感じる。昨年のアルバム『Vol.1』(Spotify / Apple Music)もおすすめです。

Crizin da Z.O, Iggor Cavalera – O Fim Um

リオデジャネイロのインディーレーベル QTV Selo からリリースされたCrizin da Z.Oのアルバムから。ストリートのエグいファンキのサウンドをベースにしつつ、洗練されたプロダクションを通じてカオティックなミクスチャーサウンドに仕上がっていて、すげー妙だけど聴きやすい。耳をつんざくようなファンキのリフをメタルのサウンドへ溶け込ませる冒頭の本曲はそのよい例。

Lydo, Tomás Urquieta – Coil

ニューヨークを拠点とするLydoがローンチしたレーベルX-TRA.SERVICESの第一弾リリース、LydoとTomás UrquietaによるコラボEP。ミニマルな4つ打ち(1曲めは除く)はどれも超クールで、痙攣するようなエレクトロニック・パーカッションのロールが豊かなテクスチャを生んでいる。「Hand of God」もいいんだけど一番ストイックな「Coil」を推しておく。

sober rob – GO!

アメリカのプロデューサー、sober robの最新リリースは140のUKダブステップ調のベースチューン。スウィングしたビートとじわじわ入れ代わり立ち代わりモジュレーションしていくウワモノはシンプルなようで結構驚きがある。細かいエディットやさりげない展開がクセになるシングル。カップリングのSTFU Dubもベースのブリブリっぷりが良い。

HOWL – NEURO NEBULA

ベルギーのプロデューサー、HOWLのニューシングル。基本チャラめのベースミュージックではあるのだけれどリフのサウンドの繊細さに惹かれるところがあり。そこまで目立った展開をせずにリフのバリエーションで聴かせる感じもかなり好き。

Big Animal Theory, It-Works – Peak

アートワークが毎度印象的なBig Animal TheoryがラッパーIt-Worksを迎えてリリースした1分半のタイトなトラック。必要最小限の装飾を排したサウンドにモノトーンなIt-Worksのラップがベストマッチ。生じゃ歌えない畳み掛けるように重ね気味にパンチインしてくるラップの性急さも良い。

youra – Worm In The Apple

韓国のシンガーソングライター、youraのシングル。性急なイントロからフットワークっぽいビートにのせて漂うようなヴォーカルと印象的なリフレインがかわるがわる顔を出す。このビートがすごく面白くて、終盤のプリペアド・ピアノみたいにも聞こえるメロディアスなパーカッションの打ち込みが耳に残る。

田島ハルコ – Y2K ROUGAI

歪んだ303が暴れるビートに乗せてリアルなY2Kの記憶と現在をラップしているのだけれど固有名詞やスラングの絶妙さに(ちょっと世代違うけど)ぶち上がってしまう。「バキ童チャンネル」ってラップした人いまのところ(そしてこれからも)田島さんしかいないでしょ……。リリックビデオみながら聴きましょう。

Giant Claw, galen tipton, diana starshine – CRASH

Orange Milkからco-founderのKeith RankinによるGiant Claw、おれの最近気に入っているgalen tipton、そしてdiana starshineのコラボによる1曲。三者が混じり合うというよりはマーブル状になって切り取る瞬間ごとにぜんぜん違う風景見えてくるみたいな仕上がりで、

REIRIE – Silly Garden

hirihiriとvalkneeが昨年活動再開したREIRIEに楽曲提供。PRODUCT期のSOPHIEを憑依させたみたいなドライでねじれたエレクトロ・ポップで最高です。

NMIXX – Passionfruit

逆に今やってない奴いるんかというレベルでそこかしこでやってるジャージークラブ、好きだからいいけどもしかして食傷気味になってしまうのではと思っていたけれど、NMIXXのこれはハリのあるK-POP的ヴォーカルのうまみもありつつ、リフのキュートさで頭ひとつ抜けてる気が。

rowbai – nasake

シンガーソングライターrowbaiの来たるアルバム『naive』からの先行シングル。メランコリーを漂わせつつもメロディアスなビートと簡潔ながらポエジーあふれるリリックの組み合わせは、なんかちょっとdodoに近いものも感じたり……。メロディの感覚が近いのかしら。アルバムを楽しみにしております。

samayuzame – 亡き乙女のためのⅡ

samayuzameのシングルは曲想からリズムの細かなニュアンスまで、プログレばりの展開をポップソングの尺にさりげなくまとめあげる力量がみなぎっている。気を抜けばチージーになりそうなコードにメロディで陰影を深めるアプローチが面白い。

Ben Howard – Rumble Strip

イギリスのシンガーソングライター、Ben Howard。2021年のアルバム『Collections From The Whiteout』は実は地味に好きなアルバムだったのだけれど、同作のアウトテイクが正式にリリース(アナログ盤限定で入ってたりしたらしい)。The NationalのAaron Dessnerがプロデュースしていて、グッドメロディにちょっとユーモラスなエフェクトがひっきりなしに顔をだすファニーさがくせになる。

フレデリック – PEEK A BOO

昨年のM-1、一番笑ったのはヤーレンズのボートレースのくだりで、楢原が「のってけ♪ のってけ♪」とフレデリックの「スパークルダンサー」を一瞬口ずさんだところだったんだけどそれはどうでもよく、フレデリックが新曲をリリース。キャッチーなメロディとストレンジなリフにタイトな演奏、これだけでもフレデリックはやっぱいいなぁと思うんだけどさらにわけわからん大胆な展開も入ってきて、サービス精神旺盛すぎ!

AB6IX – ALL NIGHT

K-POPボーイズグループAB6IXのミニアルバムを聴いていたら、心地よいソフトな4つ打ちが始まるかと思いきやなかなかトリッキーなリズムを刻みだしてちょっとびっくりしたこの曲。キックとベースがシンコペーションして小節をまわりこんで醸し出す浮遊感はなかなか出色。こういう不意打ちって最近あんまりなかった気がする! よいです。

miida and The Department – Escape

miida(元ねごとの沙田瑞紀のソロ名義)とThe Department(avengers in sci-fiの木幡太郎と稲見喜彦のユニット)によるコラボユニットからのニューシングル。4つ打ちのハウシーな歌モノなのだけれど、単にハウスのグルーヴを追求するというよりも、あえてガチャガチャとしたパーカッションを被せてみたり、ちょっといなたい展開を入れてみたり、そういう遊び心の部分がぐっとくる。

Magic Flowers – Believe In Paradise

モルドヴァ出身のハウス・デュオ、Magic FlowersのEPからお気に入りの一曲。ミニマルハウスっぽさも漂うぶっといベースと断片的な声ネタが印象的なハウストラック。EPのなかだとダントツで地味な曲ではあるんだけど、ベースの質量感は随一。長かったらいいのにな~。サブスクとアルバムの内容違うけどBandcampでも買えます。

北村蕗 – Solution

新曲出るたびに紹介している北村蕗ですが、コンピ『CONNECTION NEXT UP COMPILATION Vol.4』に提供した楽曲がお目見え。7拍子のトリッキーなループを軽やかに乗りこなす見事さ! 毎度ほんとうに凄いです。

Aprxel – planet hollywood

ベトナム・ハノイのシンガーソングライター、AprxelのアルバムはストレートなR&Bのヴォーカル・アルバムにサウンド・コラージュを施したようなカオティックな世界が広がるインパクト大の作品。Pitchforkにもレビューが載っていて、drain gangやJPEGMAFIAを引き合いにだしながらそのスタイルが語られている。今回ピックアップしたのは長尺コラージュ曲の「planet hollywood」。最後の「escape 2 farewell」も超いいし、短い曲なら「terrorizers」もいいんだけれど……。アルバム全体おすすめです。

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[告知]美学校にて「基礎教養シリーズ〜ゼロから聴きたいテクノロジーと音楽史〜」を開催します

2月25日(日)に神保町・美学校にて「基礎教養シリーズ〜ゼロから聴きたいテクノロジーと音楽史〜」を開催します。昨年頒布したZINE「音楽とテクノロジーをいかに語るか」をベースに、音楽とテクノロジーの関わりについて考える4時間(!)となっております。

自分からはイントロダクション的なトーク+テクノロジーにおける「脱植民地化」をテーマにしたトークの2本をお送りするほか、ゲストに東京藝大の松浦知也さんをお招きし、現代の音楽制作に欠かすことができないコンピューター/コンピューティングについてお話していただきます。

松浦さんのお仕事は公式ウェブサイトでうかがい知ることができますが、『クリティカルワード ポピュラー音楽』に「プログラミング」の項で執筆されているほか、ウェブでも公開されている博論「音楽土木工学を設計する——音楽プログラミング言語mimiumの開発を通じて」がかなり面白いのでおすすめです。

以下に開催概要と自分からの前口上を添えておきます。内容は上掲のウェブページとかわりありませんが……。

「基礎教養シリーズ〜ゼロから聴きたいテクノロジーと音楽史〜」開催概要

講 師:imdkm/ゲスト:松浦知也
日 程:2024年2月25日(日)
時 間:13:00〜17:00 ※延長の可能性あり
開 催:対面/オンライン
参加費:対面・・・1,650円(アーカイブ付き、税込み) ※先着25名
    オンライン・・・1,100円(アーカイブ付き、税込み)
    美学校在校生(オンライン)・・・550円(アーカイブ付き、税込み)
    アーカイブのみ・・・1,650円(税込み) ※2/27日より販売開始
会 場:美学校2F教室
    東京都千代田区神田神保町2-20-12 第二冨士ビル 2階
    https://goo.gl/maps/th8HqeciE7dRfDdK8
    ※会場まではビル内の階段を利用してご来場ください
主 催:美学校

参加はPeatixからお申し込みください。

言うまでもなく、音楽とテクノロジーは深い関係を持っています。音楽制作においても、流通においても、受容においても、テクノロジーは音楽という営み全体に浸透しきっています。とりわけ20世紀以降、録音芸術として著しく発展したポップ・ミュージックを考える上で、音楽とテクノロジーの関わりを考えることは非常に重要です。

なにより、テクノロジーは音楽への手段であるのと同じくらい、音楽を聴き、語る手がかりになります。どんな道具をつかって、どのように制作されているか? どんな技術的状況で、どのように受容されてきたのか? そんな問いを意識することで、音楽を聴いたり、解釈したり、語ったりする方法がより豊かになるはずです(文化的なコンテクストを知ったり、音楽理論による分析をするのと同じように)。この講座の目論見はまずもってこの点にあります。つまり、「聴き方」「語り方」の拡張です。

しかし、音楽をより深く知るための枠組みとしてテクノロジーを援用する際に、テクノロジーの側が抱える文化的なバイアスを無視することはできません。テクノロジーは音楽の可能性をひらくと同時に、クリエイティヴィティを制限することもままあります。そして、しばしばその可能性と限界は、社会的・政治的な条件とむすびついているのです。とすれば、音楽への理解を深めるのと同じくらい、テクノロジーに対しても理解を深めなければ、「音楽とテクノロジー」をめぐる語りは大きな盲点を抱え込むことになるでしょう。

この講座では、音楽とテクノロジーがどのような関係を築いてきたかを検証しながら、それがいかなる課題に直面しているかの問題提起もしたいと思っています。「音楽とテクノロジー」が主役ではありますが、このふたつを社会的・政治的なコンテクストへと開いていくことが本講座の裏テーマです。

先に「20世紀以降、録音芸術として著しく発展したポップ・ミュージックを考える上で、音楽とテクノロジーの関わりを考えることは非常に重要」だと書きましたが、単にその状況を「よりよく理解する」ために重要なのではなく、むしろ状況に批判的に介入するためにこそ、音楽とテクノロジーの関わりを改めて考えることが重要なのです。

あまりに広いテーマなので、今回の講座では、音楽制作の現場におけるテクノロジーに焦点をしぼりたいと思います。また、現在の音楽制作において欠かすことができないインフラとしてのコンピューティング/ソフトウェア開発に造詣が深い松浦知也さん(東京藝術大学)をゲストにお招きし、議論を深めたいと思います。

音楽制作にフォーカスする性格上、音楽を自分でつくっている人や、つくることに興味がある人に特に興味深く聞いていただける内容になるのではないかと思います。とはいえもちろん、音楽を聴くこと、音楽について語ることに関心がある人にも楽しんでいただけるはずです。

【オープン講座】「基礎教養シリーズ〜ゼロから聴きたいテクノロジーと音楽史〜」 | 美学校 (bigakko.jp)
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ポプミ会アドバンス(Simon Reynolds『Retromania』読書会)第二期開催のお知らせ

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何度か書いてますが、昨年から「ポプミ会アドバンス」と題して、Simon ReynoldsのRetromania: Pop Culture’s Addiction to its Own PastAmazon商品ページ)の読書会を開いております。昨年いっぱいで一章分を読み切って、区切りが良いので仕切り直してスタートする予定です。

ポプミ会アドバンス第二期は、2月11日(日)19時~からポプミ会Discordサーバーで行う予定。もし関心のある方はこちらのリンクからサーバーに参加ください(リンクは投稿日の1月19日から一週間有効)。

この本は特に2000年代に顕著になった(という)ポップカルチャーの過去への耽溺を扱った本で、過去を絶え間なく参照しつづけ、ひたすら「リバイバル」を繰り返すポップカルチャーに未来はあるのか? という話をしています。まあ10年以上前(原著刊行は2011年)の本なのでいまから見て牧歌的に思えるところも多々あるんですが、一方で、基本的な問題意識は古びていないばかりか、もっと切実になっているようにも思われます(実際、この本へのアクチュアルな応答として、柴崎祐二『ポップミュージックはリバイバルをくりかえす 「再文脈化」の音楽受容史』が著されています(Amazon商品ページ))。

「レトロ」そのものに興味なくとも、2000年代の(英語圏の)ポップカルチャーや、あるいはインターネット以後のクリエイティヴに興味あればおもしろく読めるかと思います。Daniel LopatinとかプロトVaporwave的なトピックも結構出てくるのがわかりやすいアピールポイントかも?

まあまあスローペースで、参加者がそれぞれ数パラグラフの担当箇所を翻訳して持ちより、ああだこうだと喋る会です。翻訳さえ仕上げてもらえば機械翻訳などを活用してもらってまったく構いません。2月11日(日)の初回は改めての顔合わせとこれまでの振り返り、今後の進め方についての話し合いをする予定です。もし関心がある方はお気軽にどうぞ。

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[Soundmain Archive] 有元キイチ(a.k.a Tondenhey / ODD Foot Works)インタビュー(三浦透子「私は貴方」作編曲ほか)(2022.06.29)

濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』でも注目を集めた俳優の三浦透子がリリースしたシングル、「私は貴方」。ピアノやサックスのアコースティックなサウンドを軸に、テクスチャ重視のビートレスな構成が生み出す浮遊感と、不思議な譜割りの反復が生み出す粘るようなグルーヴが印象的な一曲だ。アンビエントと歌モノとしてのポップが重なり合う、以前取り上げた森山直太朗「素晴らしい世界」と共振するような作品と言えよう。

心と身体にすっと染み込んでいくようなノスタルジアとスリリングな響きが同居するこの曲で作詞・作曲・編曲を担当したのは、Tondenhey名義でODD Foot Worksのギタリスト及びメインコンポーザーとしても活動する有元キイチだ。これまでサウンドプロデュースで他のアーティストとコラボレーションしたことはあったものの、表立った楽曲提供はこれが初めて。しかし、ODD Foot Worksのビートオリエンテッドなイメージとはまったく異なる「私は貴方」は、その音楽性の広がりを感じさせる力強い一曲たり得ている。

そんな「私は貴方」をめぐる本インタビューでは、そのユニークな制作プロセスや新しい感覚を持ったミュージシャンとの出会い、往年のヒット曲の再解釈など、率直で興味深いお話を聞くことができた。

三浦透子「私は貴方」

「縛り」が形づくるユニークなグルーヴとサウンド

「私は貴方」はODD Foot Worksでのヒップホップ的なビートオリエンテッドなサウンドとはかなり異なっていますよね。今回の楽曲はどのように着想していったんでしょうか。

ODD Foot Worksによる2020年リリースのEP「Qualification 4 Files」

元々、ソロをやりたいなと思ってデモを作り始めていて。テーマとしては、自分が普段頼りがちな部分であるビートとギターをあえて使わないことで、逆にこれまで作ってきたビートの感じや、自分のギターが聞こえてくるんじゃないかというのがありました。そんな思考で作っていたソロのデモを、うちのマネージャーが三浦さんが所属するレーベルであるEMI Recordsの担当ディレクターに送ったことがきっかけで、依頼をいただいて作ったのがこの曲です。

「三浦さんに提供するぞ」と思って作ったというより、元々ご自身の中で挑戦してみたかったことを実践した結果なんですね。

そうですね。三浦さんに最初にお会いした時から、音楽よりもテクスチャーが聴こえるようなものを作りたいという自分の考えはお伝えしていて。でも、実際にお話ししていくうちに固まってきた部分も多いです。

最初のデモは打ち込みですか?

はい、最初はピアノ1本でした。僕はピアノがあまり弾けないので、これも自分が慣れていない手段でやる、みたいな縛りのひとつです。そうして出来た土台に、サックスやギターを重ねていきました。

ちなみにサックスもギターもプレイヤーの方に来てもらって、八畳ぐらいのワンルームの自宅で録りました。近所から苦情が来ないかどうか、心配になりながら……でもそれも制約として良かった。全部がボソボソ鳴っている感じなんですけど、スタジオに入った時にも、「なんでこれが良く思えるのか」を考えて、意識的に再構築していきました。

この曲は展開の仕方が面白いなと思っていて。場面ごとにいったん舞台が暗転して次の場面に、みたいな感じで、パートごとに止まって、また動き出すみたいな動きが何回かあります。ある意味で演劇的とも言える印象を受けました。

はじめはひとつの縛りとして、ワンメロディ……つまりメロディを1つにしようと思っていたんです。よくある、イントロ~Aサビ~Bサビみたいな構造からは外れようと。ただ、やってみると変化がなさすぎて聞き応えがなかった。そこに展開をどうつけるかを模索して、結果的にそういう作りになりました。

基本的にビートらしいビートはほぼない曲で、各パートも、ピアノを除くとリズムを強調する要素が少ない。でも、ヴォーカルの譜割りはとてもユニークなグルーヴを感じさせるものになっています。

ワンメロディという縛りに加えて、最初は歌詞をすべて「五七五七七」で行けないかという考えがありました。でも、そのリズムに乗せるとなると、どうしてもポエトリーリーディングみたいな感じになってしまう。試行錯誤して最初の「五七五七七」を変形させていく中で、拍から逸脱した音が出てきたりするのを楽しみながら作っていきました。

偶然の出会いから生まれた印象的なアレンジ

「私は貴方」で耳を惹きつけるのは、数多くフィーチャーされたアコースティックな楽器の音色です。サックス、ピアノ、ギター、シンバルといった楽器の編成は、どのようにして選んでいったのでしょうか。

自分以外の人の手を借りたかったので、ぱっと目についた人に声をかけてみることにしたんです。それで、渋谷のTOKIO TOKYOというライブハウスでODD Foot Worksとしてライブをやったときに、バーカウンターにいた人に「最近Shazamした曲とかある?」って話しかけたんですね。そうしたら、いま面白いと思ってる音楽が自分とめちゃくちゃ似ていて。聞いたらサックスを吹いていると言うので、もう録らせてもらおうと。

それが今回サックスを吹いてもらった内田恵里花さんです。元々はサックスを入れる予定もなかったんですよ。サックスプレイヤーってフレーズ重視の人が多い気がするんですけど、内田さんはテクスチャーの部分で微細な変化を楽しませるような表現をしたいと言っていて。「あ、こういう人っているんだ」「神様ありがとう」って感じでしたね。

すごい出会いですね。サックスはこの曲の中でもとりわけ印象的で、重要な役割を果たしている楽器だと思うので、今の話はかなり意外でした。

ひさびさにすごく面白い出会いでした。内田さんは自分からアイデアも出してくれて、後半のアタックの遅い音は彼女の吹いたサックスの音を逆再生したものです。

そうなんですね! あのアタックの遅いサウンドが入ってくると、ボーカルのリズムの面白さが際立ちますよね。後半、ほぼその音とボーカルの絡みだけになるパートがあって、すごく好きなんです。

わかります。自分の中でもあれが一番予測できなかった構成でした。あのおかげでサビで拍の取り違えが起きるというか。ちゃんと構造を言語化することはできないんですけど、ちょっと変拍子チックに、大きな3拍子に感じられるんですよね。

その他のプレイヤーの方はどういった経緯で参加されたのでしょう。

ギターの馬場貴博さんは、大学のジャズ研時代の先輩です。彼の弾くギターがもともと好きだったんですけど、内田さんとサックスを録り終わったくらいのときに、「ちょっと馬場さん呼んでみよう」という話になり、また家に呼んで録らせてもらいました。

有元さん自身もギターを弾かれますけど、今回は他の方にお願いしたんですね。

自分で弾くのはODD Foot Worksがありますし、ギターすらも別の人に頼めるという楽しさがソロにはあると思っていて。最近はまた弾きたいとも思ってきているんですけど、今回は他のギタリストを呼びたかったんです。

ピアノの坂本龍司君……というのは、実は偽名なんですけど(笑)。すごく気心が知れている、一番わかりあっている人です。大学時代のジャズ研の同期で、当時からよく一緒にセッションをしていて。ODD Foot Worksの初期の作品でも、めちゃくちゃ弾いてもらっています。

ODD Foot Works「夜の学校 Feat. もののあわい」(2017年)

あとは、小林隆大君がシンバルで参加してくれています。もともと小林君を誘うつもりはなかったんですけど、デモを聴いてもらったところ、「ここにスモークを足したい」と言ってきて。抽象的すぎて、うまく理解できない部分もあったんですけど……任せてみようと出来上がったものを聴いてみると確かに、小林君の音が全体にスモークをかけたり、晴らしたりしてくれていると思います。

そんな感じで、今回参加してくれた人たちはみんな楽器のプレイヤーなんだけど、テクニックを見せたいわけじゃなくて、楽器の音を聴かせたい人たちなんです。

そうしたプレイヤーの皆さんの様々なアイデアから成り立っている楽曲でもあるんですね。

そうですね。ただ、こちらからお願いしているところもあって、例えばイントロの直後に入っている、サックスを吸い込む音なんかがそうです。サックスという楽器は普通、楽器の中に息が吹き込まれて音が出るものですけど、逆に吸い込んだ音を使ってみたいなと。逆再生にも通じる「反転させる」みたいなテーマは、自分の中にあったのかもしれないと思いますね。

ソロ活動を通じて変化するDAWへの向き合い方

録音とミックスを担当されているのは、佐藤慎太郎さんですね。

「こういう音像を作りたい」というイメージは最初からあったので、慎太郎君にリファレンスの曲を何個も送りました。そこから僕の知識では理解できない部分もだいぶ慎太郎君が汲み取って、仕上げてくれましたね。

具体的には、実音よりも楽器に触れている音が出る音楽にしたくて。僕はライブで演奏する機会も多いんですが、外に出る音と自分の中で感じる音では全然違うという感覚があります。ギターのピッキングをする音や、ピアノのタッチノイズやペダルを踏む音、そういう接触音みたいなものをいっぱい入れたい、と慎太郎君に伝えました。録音する時にもマイキングの位置を一緒に探りました。 サックスのベルの中にタオルを突っ込んだり、ピアノの弦の上に毛布を敷いたり、できるだけプレイヤーが体感している音を大きめに録るということを意識しました。

そういったプレイヤーとして感じているサウンドに注目するアプローチは、打ち込みの比重が高いODD Foot Worksとはかなり異なりますよね。それは意識的な差別化の結果なのでしょうか。

ソロを始めた時にはあまり意識していなかったですね。最近になって、「バンドとは別に自分が表現したいことがある」と気づいてきました。

普段デモやビートを作るときの環境は?

Logic Pro Xを使っています。ただ、今はDAWを「録音データをまとめる場所」に変えたくなってきていて。昔はDAWは「打ち込みをする場所」だったんですけど、特にソロ活動では「録った音を並べる場所」に変わっていっています。いろんなアプローチのビートを作ってきて、 やり切っちゃった部分も自分の中にあって。

そうした変化にともなって、ソフトウェアの使い方で何か変わったことはありますか。

DAWから発想することに飽きちゃっていて、「こういう音にしたいから、こういうデジタルの処理が必要だな」と考えるようになっています。たとえば「私は貴方」では、「過去」とか「連想」を表現するために、奥行きや立体感を作りたくて、それで声を最初からステレオにするみたいな発想が出てきたんです。

オフコース、ブレイク・ミルズ、広瀬香美――変わっていく聴き方

三浦透子さんのYouTubeラジオにご出演された際には、Apple Musicのプレイリストを併せて公開されていましたよね。吉田美奈子やジョニ・ミッチェル、ジェイムス・テイラーなどを選曲されていましたが、こうした70年代のシンガーソングライターの楽曲がリファレンスとしては多かったのでしょうか。

三浦透子 YouTube Radio -試運転- vol.1 (Guest / 有元キイチ from ODD Foot Works)

あそこで紹介した楽曲は、リファレンスで共有したものとは違いますね。そういえば、言われて思い出しましたが、オフコースの「老人のつぶやき」(1975年)という曲を「なんでこんな音がいいんだろう」と思って慎太郎君に共有しましたね。「みんなのうた」からの依頼を受けて作られた曲らしいんですけど、タイトル通り老人が死ぬ話なので、不採用になったという逸話があって。番組とは完全に真逆のことをしようというアイデアも好きです。

オフコース「老人のつぶやき」(1975年のアルバム『ワインの匂い』より)

他に「これは!」と思ってリファレンスにした楽曲はありますか。

ジョン・レジェンドをブレイク・ミルズがプロデュースした曲を送りましたね。いまは曲を聴くときもつくるときも、サウンドに奥行きをどう作っているかを一番チェックしていて、ブレイク・ミルズにはそういう意味ですごく影響されています。

ジョン・レジェンド『DARKNESS AND LIGHT』(2016年)。全曲をブレイク・ミルズがプロデュースしている(共同プロデュースも含む)。

あと、それとは全然違う観点なんですけど、広瀬香美の「ロマンスの神様」をよく聞いています。すごく近未来的な音像で、マイケル・ジャクソンが歌っているみたいに聞こえるんですよね。かつ「土曜日遊園地 一年経ったらハネムーン」とか、歌詞の言葉も節回しと一体となった立ち方をしていて。バブル時代の能天気さもあると思うんですけど、 今聞くと、また別の解釈ができる。時間が経ったからこそやっと全体像で聞けるという感じはありますよね。「こんな変なギター入れてるんだ」とか、「サビ前でこんなに訛るのか」とか。

広瀬香美「ロマンスの神様」

最近ストリーミングのレコメンドで知った尾崎友直『Slow motion』というアルバムが面白かったんですが、全部30秒とかで曲が終わるんですよね。結構似たり寄ったりの曲やアルバムが多い中で、コンセプトから自由に作っている人は面白いと思います。

尾崎友直『Slow motion』

確かに。ちなみに、広瀬香美を再発見したきっかけは?

King Gnu「白日」やOfficial髭男dism「Pretender」のカバー動画です。めちゃくちゃハードにスイングして歌う節回しが面白いし、トラップとかの文化にもちょっと近いように感じて。「曲自体もそういう節回しで書いてるのかな」と聴いてみると、確かに通じるところがあるんですよね。

広瀬香美によるKing Gnu「白日」のカバー演奏動画

「私は貴方」を経た、ソロ活動の現状

現在はODD Foot Worksとしても活動されているところですが、ソロ名義でのリリースの予定はありますか。

アルバムを作りたいとは思うんですけど、ライフワークみたいな部分もあるので、〆切を決めていついつまでに……という感じでは今のところないですね。これまで聞いてこなかったような音楽を色々聴いて、インプットを増やしていきたいと思っているところです。ずっと制作してはいるので、スタジオワークの前に地図を作っている状態ですね。

「私は貴方」は初めての楽曲提供でしたが、かなり反響もあったんじゃないですか。

《VIVA LA ROCK》というフェスに出たときに、飲食ブースで結構な数のアーティストに曲のことについて言われましたね。今まで経験したことのない感じのリアクションを聞けて、すごく嬉しかったです。

特に印象深かったリアクションは?

「私は貴方」っていう言葉自体の発明を褒めてくれたのが一番嬉しかったです。「これ言った人いないよね」みたいな。言葉が聞こえるということは、すなわちサウンド面とも不可分に作れているということなんだと思えましたし。

今後もこうした提供のお仕事はやっていきたいと思われますか。

はい。たとえば、超明るい曲をこの感じで表現できたら面白いと思っていて。音像的にもすごく完成度が高く、かつ、もっとアップテンポな曲というか。なので、仕事を待っている状態です(笑)。

楽しみです。今回はさまざまなお話を伺えてとても嬉しかったです。ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

取材・文:imdkm

有元キイチ プロフィール

1995年生まれ、東京都多摩市出身の音楽家。

多様なジャンルを横断するヒップホップグループ、ODD Foot Worksのギター/サウンドプロデューサーとして2017年にデビュー。

以降、グループでは独創的かつ大衆性にも富んだ音楽像を担うキーパーソンとなり、個人としては佐藤千亜妃(きのこ帝国)のサウンドプロデュースを手がけ、池田エライザの楽曲制作などにも参加。

2021年12月には有元キイチ名義で初のソロライブを開催。深淵なメロウネスをたたえた未発表の新曲群を体現しソロアーティストとしての新たな可能性を提示した。 2022年3月、三浦透子「私は貴方」の作詞、作曲、編曲及びサウンドプロデュースを手がけた。

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なんか知らんがヨドバシで豆が安い

なんか知らんがヨドバシで豆が安い。

ヨドバシ・ドット・コムでのチャナダール(ひよこ豆)の商品ページのスクリーンショット

ヨドバシ.com – アンビカ Ambika 14001 チャナダール 1kg 通販【全品無料配達】

ヨドバシ・ドット・コムでのマスールダル(赤レンズ豆)の商品ページのスクリーンショット

ヨドバシ.com – アンビカ Ambika レッドレンティル豆(マスールダル) 1kg 通販【全品無料配達】

その他にもこれでもかという品揃えでめちゃくちゃ豆があり、安い。いま見たら「お取り寄せ」になってたけど。種類によってはまだ在庫ある。自分は発見次第即注文し、翌日には届いた。

赤レンズ豆はトマトスープにして、ひよこ豆はファラフェルにして食べている。

スープは適当に野菜を放り込んで煮込んでいるだけだが、ファラフェルはいくつかネットで見れるレシピ(これとかこれとか)を参考にして、ノンフライヤーで加熱している。最初につくったときは食べれなくはないがぱっさぱさで仕方なかったが、きちんと浸水してあまり細かくペーストにしすぎないように気をつけて、つくるごとにおいしくなっている……気がする。

ホブズ(ピタ)も自分で焼いて、カット野菜なんかをあわせてサンドイッチにすると、安い割にちょっとしたものを食べた気分になって、良い。

器に盛り付けられたファラフェルサンド
器に盛り付けられた赤レンズ豆のスープ

2024年は「豆」と「酸味」が来ます。これは予言です。

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日曜日のプレイリスト #004

今年もよろしくお願いします。今回あんまり曲数ないですが。

Lil Uzi Vert – Red Moon

Lil Uzi Vertの新曲は軽やかなドラムンとトラップが溶け合うメロディアスな1曲。クライマックスに達さず、ずっとエモさのプラトーに宙ぶらりんみたいなバランスが絶妙で、ビートがスイッチするタイミングもこれみよがしのところがないのが良い。

元ネタはブルックリンのインディ・ポップデュオ、CafunéのTek Itのアコースティックヴァージョンということです。

In The Blue Shirt – Time (feat. Stones Taro)

アリムラ先生(実際に先生になってしまわれたが)が年末にリリースしたEPではビートのアレンジで京都の盟友Stones Taroとコラボレーション。UKGやドラムンの硬質なビートがひんやりとしたメロウさとジャストフィットしていて、これはナイスコラボやと思いました。ここでピックアップしたのはドラムン/ジャングルな1曲。異なるスタイルが組み合わさった以上のケミストリーがあって、こういうコラボって結構貴重かも。

Sully – XT

UKはノリッジ拠点のプロデューサー、SullyがBasic Rhythmとスプリットシングルをリリース。パーカッションもブレイクビートの刻みもどこか歌うようというか、パーカッション・アンサンブルの演奏を聴いているような響きの豊かさがあってめちゃくちゃ面白い。構成としてはかなりベースとパーカスとブレイクオンリーのストイックなものなのに、どこか親しみやすい表情がみなぎっていてよかった。

They Hate Change – Wallabees & Weejuns

フロリダ・タンパのラップデュオ、They Hate Changeがアルバムリリースを発表、そこからの先行シングル。96 Backをプロデューサーに迎えたこの曲はエレクトロニカ的な端正な響きもあるジューク/フットワークからきゅっとビートスイッチしてファンキーな4つ打ちのハウストラックに一転。エクレクティックなのにリズムの力だけじゃなくてリズム自体がメロディックにも感じられる作り込みが心地よく、ラップともフィットしている。

dj galen (galen tipton) – brain juice

recovery girlとしても知られるgalen tiptonはアンビエントとぞわぞわ系ASMRを横断するようなおもしろテクスチャ音楽をやっていてかなり好きなんですが、これはフロア寄りのサウンドを展開するdj galen名義でのリリース。みょうちくりんな音響が詰まった上モノがビートのインパクトと拮抗している感じが微笑ましく、かつ興味深くもあり。

Batu – Other Means

昨年は自ら新たに立ち上げたレーベルから2枚のEPをリリースしたブリストルのBatuが年明けから早速シングルをリリース。ストイックに打ち付けるビートに対して拍節の感覚をゆらゆらと交わすようにモジュレーションし、レイヤーされていくサウンドがやはり面白い。コンスタントなリズムの上で不定形のセッションが繰り広げられるような時空のねじれ感も、ひとつひとつのサウンドの響きもおもしろい。濃密です。

Loukeman – Easy

トロントのプロデューサー、Loukemanが2021年のアルバム『Sd-1』に続くニューアルバムをリリース。うっすらビットクラッシュをかけっぱなしにしたような朧気なローファイさと緩慢なBPMに身を浸していると、ビートがリズムを刻む以上にある種の気分を封じ込めているように思えてきて面白い。メロディなのか、リズムなのか、ノイズなのか、響きの中でいろんなものがあいまいになっていくなかにシンセのリフやアルペジオが入ってくると変な異化効果がある。構造的にはダンス・ミュージックなんだけどテクスチャの妙で違う世界が見えちゃうのはTwo Shell聴いてるときの感じに近い。

Logic1000 – Every Lil’ (feat. DJ Plead & MJ Nebreda)

オーストラリア・シドニーのDJ/プロデューサー、Logic1000が3月にニューアルバムを発表。そこからのリードシングルはメルボルンのレバノン人プロデューサーDJ Plead&フロリダのヴェネズエラ出身シンガー/プロデューサーMJ Nebredaとのコラボレーション。ゆったりとしたテンポの4つ打ちに、DJ Pleadのカラーを感じるパーカッションづかい、そしてMJ Nebredaのヴォーカルが組み合わさる渋いトラック。DJ Pleadは2022年作「Quick E​.​P.」が好きだった(Bandcamp)。

tripleS – Just Do It

ぼんやりしてたらいまだに全貌がよくわかっていないK-POPガールズグループ、tripleSがサブユニットNXTでリリースしたシングル。ヴォーカルを軸にしたダンス・ポップでK-POPらしさを感じさせつつ、クールな展開と思った以上にわちゃわちゃ鳴ってる整理されきってない音の群れがいい意味でフックになって耳に残るというか。「Hey!」のチャント、リバーブかけすぎでは? それがいいのだが。

serpentwithfeet – Safe Word

こちらもニューアルバムのリリースを控えるserpetwithfeetのシングル。哀愁を誘うラテンのビートにオートチューンが美しくかかったヴォーカルが染み入る1曲。あけすけにセクシュアルかつきわめて親密なリリック(safe wordって、BDSMのプレイなどで使われる「これ以上はあかん」っていう合言葉ですね。Geniusで見たらちょっと笑うくらい直接的な内容だった)が印象的。

Faye Webster, Lil Yachty – Lego Ring

中学校からの友人だという(!)Faye WebsterとLil Yachtyのコラボレーションは、Websterらしいインディ魂が近年のLil Yachtyのサイケ趣味と絶妙に噛み合っていてめちゃ面白い。ふたつのビートを変わりばんこに往復する構成も妙だけどすごく良い。Lil Yachtyのあの始終震えっぱなしの声が少しコミカルでもあり、しかし楽曲に漂うアーシーながらも幽玄な雰囲気にぴったりとマッチしてもおり。

映秀。 – Boys & Girls

若手シンガーソングライター映秀。のEP「一寸先の貴方へ」の収録曲なんだけれど、クレジットを見るとプロデュースがなんとTennyson(もう1曲、「左様なら」にもクレジットあり)。たしかにSEもふくめてすごく端正に組み立てられたサウンドはTennyson印で、Thinkブレイクの「いぇー!ふー!」が遠くから上品に聴こえてくるのがやたらよくて笑ってしまった。Tennysonと映秀。は以前から交流があるよう(「ついこないだTennysonというカナダ人のアーティストと初めて遊んだ時。僕も彼も頑張って互いの言語を使いながらもじもじコミュニケーションをとっていたのだけれど、セッションをした途端何かがつながったかのように仲良くなれた。」とInstagramのポストにある)。

QWER – Secret Diary

K-POPガールズバンド、QWERのデビュー作から。メロディの感じが懐かしK-POPっぽいと同時にアレンジがずとまよとかポストボカロっぽい感じで頭がちょっとくらくらする面白さ。ボカロ感で言うならメインの「Discord」のほうがリリースカットピアノもがんがん出てきてマジで「それ」すぎるんだけど、好きなのは「Secret Diary」かなぁ。元NMB48の李始燕がメンバーだそう。マジか。

麻倉もも – 幸せって書いて

(o・∇・o)

Creepy Nuts – Bling-Bang-Bang-Born

「ビリケン」からジャージークラブづいているCreepy Nutsの新曲はアニメ「マッシュル」のタイアップもあって早速TikTokでバズっている。この曲、ジャージークラブ要素はもちろん重要なんだけれど、どちらかというとちょっとエレクトロスウィングっぽい上モノとミーム化しやすい意味のないフックが勝利の要因という感じが。

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AKAI MPC500日記 ふたたび触り始めるの巻

昨年、AKAI MPC500を中古で安く買った。Roland SP-404系を買うことも考えたのだけれど、MPCを使ってみたかったこともあって、電池駆動もできてちっちゃなMPC500にした。フィンガードラムをがっつりやるにはパッド数も少ない(ふつう16あるのが12しかない)しちょっとパッド自体も小さい(とはいえ大きさ自体はMPC1000と同じはず)のだけれど、チョップ・アンド・フリップで多少遊べればいいかなと。

買った当時いろいろいじってからしばらく離れていて、年明けに初売りでレコードをちょいちょい買ったのでいっちょ遊んでみるかと改めていじりはじめた。

液晶も小さいしモードの遷移が結構要るので操作性は必ずしも直感的ではないけれども、要領を覚えればそこまで難しくはない。クイックスタートガイドを一通り読めば操作に困難を覚えることもない。とはいえ、野生のTipsをいろいろ覚えたほうがよい。

↑これが多分いちばんはやい

ヴェロシティでサンプルのスタートポイントを変える機能を使って擬似オートチョップをやるTips、これはサンプルによってハマるかハマらないか大きそう。

とりあえず某ファイセットの曲からワンループサンプリングしてチョップ、いじるなどしていた。これだけで時間がものすごく溶けるのであれですね。慣れてきたらビートテープのひとつでもつくりたい。凝ったフリップをやるまで上達すればいいが……。まあワンループ+αでざっくりやるのも美学といえば美学。

PCに溜めてあるワンショット系のサンプルをUSB連携でMPCに送ってビートを組む、みたいなこともやってみたい(それこそアーメンを叩く的な)が、それはまた今度。こういうのやりたいですな。

昨今、ハードオフはじめとした中古ショップでの楽器の値段が結構高くなっているのに加え、メルカリやヤフオクの相場もぐっと上がってしまったので、「中古の安い楽器を遊び倒す」というのがなかなかやりづらくなってしまった。こういうのは一期一会なので安く発見したときには迷わず買ったほうがいいですね。MC-505が壊れて久しいので買い直したいんだけど、あまり量も出回っていないし、相場もちょっと高め。むつかしいね。

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