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日曜日のプレイリスト #008 2024/03/24

毎度おなじみプレイリスト更新の日です。その前にせっかくなんで最近見て面白かった動画の話とかもしてみましょう。

ちょっと前にイギリスのクイズ番組でのやり取りがTwitterでバズっていた。「1990年代初頭にレイヴ・シーンとレゲエのサウンド・システムから生まれて発展したダンス・ミュージックで、代表的なアーティストとしてA Guy Called GeraldやGoldieがいるジャンルの名前は?」という問題に回答者は「ドラムンベース?」と答えたのだが、不正解。そこで司会者が放った「残念、ドラムンベースは不正解。ジャングルとお答えいただきたかった I can’t accept drum & bass. We need jungle, I’m afraid」が声ネタにぴったりすぎるということで、これを使ったジャングルがわんさか作られだした。そんなバズをきっかけに、ドラムンベースとジャングルの違いってなによ? というのを解説する動画をResident Advisorが公開。ジャングル入門編として、その文化的背景やサウンド、使われるテクニックなんかが紹介されていて、おもしろいです。

さてプレイリスト。

各曲コメント

駒形友梨 – 2 world

声優・アーティストの駒形友梨のニューアルバム『25℃』よりミニマルかつキュートなラヴソング。シンプルなリズムマシーンのビートにスキマをいかしたファンキーなシーケンスが絡みつつ、ヴォーカルも少しゆるめに脱力気味のニュアンスめちゃ良い!

NiziU – SWEET NONFICTION

NiziUの新曲は前作「Heartris」の鮮やかさがどうしても印象に残っているのでなんとなく地味な印象になってしまったのだけれど、A~Bメロの細かく動くリリースカットピアノやベースライン、ベッドスクィーク的なSEなど小技が聴いていて実は結構「Heartris」の延長線上っぽい感じも。良いです。もうちょっと突き抜けたらQWERみたいにもなりそうだけど。

ena mori – Heartache Generation

インドネシアのSSW、ena moriの新曲。最近だとTomgggとのコラボも良かったですね。ベッドルーム的かと思いきや割りと鳴りは堂々としたポップで、めちゃでかいステージが映えそうなスタイルなんですが、新曲もまさにそんな感じ。サウンドのメリハリもヴォーカルの幅も広く、「格」を感じる……!

吉澤嘉代子 – オートバイ

吉澤嘉代子のニューEP「六花」から小西遼プロデュースの1曲。ヴォーカルのニュアンスの幅で言うといま吉澤嘉代子って相当なものがあると思っていて、シネマティックというか、劇的な展開がめちゃくちゃ似合う。この曲も、ストリングスの華麗さとビートの荒々しさの対比が楽曲の展開からパフォーマンスまで同期していて、ちょっとしたスペクタクルになっている。もっと広々とした空間を感じたい気もするけれど……。

太田ひな – Still Love

東京を拠点とするSSW、太田ひなのシングル。某夜夏さんが紹介しているのを見て聴いたらとてもよかった。ゆったりとしたピアノとヴォーカルのフレージングに対するせわしないビート。こういう構成の曲の醍醐味は、グルーヴがいくつものレイヤーにわかれて重なり合うことで生まれる浮遊感だと思うけれど、それと歌声や発声がめちゃくちゃフィットしている。

鞘師里保 – alchemy

鞘師里保の新曲、提供しているのは碧海祐人! ということで聴いてみると、このアーティストらしいフォーキーな叙情がかくれたネオソウルで、鞘師里保のヴォーカルも力が入りすぎないクールさと感情表現のアツさのバランスが良い。全体のグルーヴはスウィングしつつ、ドラムのビート(特にハイハット)はスクウェアなことで生じる半透明のタイム感が心地よい! ドラマのエンディングテーマなんすね。

YOUNG POSSE – Skyline

YOUNG POSSEの新譜、1曲めでRageをやっていたり(なぜ今?)、かと思えばブーンバップ多めだったり、アフロビーツも取り入れていたり、方向性が固まってるのかそうでないのか微妙ながらクオリティはやはり高い。ラストの「Skyline」は、高域がぱきっときらっとしたドリーミーな曲なのにビートががっつりジャージークラブ。ジャージークラブさすがに食傷気味じゃね? と言いつつなんだかんだどれも一捻りがあって聞いてしまうよねぇ。

Anysia Kym – Amplitude

ブルックリンのプロデューサー/ドラマー/ソングライター、Anysia Kymのニューアルバム『Truest』から。ローファイでチルめでクールなR&B、ちょっとドラムンとかダンスビートも入って……というとなんかトレンドっぽいが、ざらっとした手触りやコラージュっぽい感覚はむしろオルタナティヴなブーンバップ勢を聴いている感じと近い(MIKEが参加してたりもする)。アルバムのラストを飾る「Amplitude」はアンビエント寄りの浮遊感あるドラムンにささやくようなヴォーカルが乗っていたと思ったら、カットアップで終わる。不思議で心地よくてぞわぞわする!

Iglooghost – Coral Mimic

Iglooghostが5月リリース予定のアルバム『Tidal Memory Exo』からの先行シングル。モトリックなエイトビートを中心としたポストパンク的な楽曲ながら、ひとつひとつのサウンドはIglooghostらしい凝ったデザインになっていて、リヴァイヴァルというよりもミューテーションって感じ(アルバムに寄せているコメントに倣うならば……)が面白い。

Adame DJ – Acid Baile 2

ブラジルはカショエイロ・デ・イタペミリンのDJ/プロデューサー、Adame DJのマジで名は体を表すトラック。2があるということは1もあるのである。ビキビキのアシッドシンセとバイレファンキのビートが組み合わさった、あまりにもタイトルそのままといえばそのままながら、そのまんまだからこそめちゃくちゃぶち上がるタイプの間違いないバンガーである。

aya – Leftenant Keith

ロンドンのプロデューサー、ayaのソロとしてはim hole以来3年ぶり?となるEP「Lip Flip」より、そのネタ使いありかよ! となるやつ。日本人としてはDJ PaypalのSlim Trak的なキワモノ感を覚えてしまうが、原曲のイメージにとらわれることなくヴォーカルのリズムをエディットしてフリーキーなリズムへと生まれ変わらせる巧みさには脱帽する。im holeで大きな役割を果たしていた自身の声はほぼ聴かれないが、そのぶんEcko Buzzの参加やこの大ネタの存在感が興味深い。ちなみにEPの売上はayaの整形手術(性別移行に関連する顔の女性化手術)にあてられるそう。

Dj Anderson do Paraiso, MC PR – DUVIDA NÃO LETICIA

Nyege Nyege Tapesがふたたびブラジルのファンキシーンからのアルバムをリリース。ベロ・オリゾンテのファンキシーンで活躍するDj Anderson do Paraisoの作風はリオデジャネイロのアグレッシヴさともサンパウロの過激さとも違うミニマルでダークなもの。暗闇のなかでフラッシュを焚かれるアーティストの姿をフィーチャーしたアートワークはまさにそんなイメージにぴったり。DJ K(こちらはサンパウロ)のエクストリームさと対比しつつ聴いてもよさげ。

Toupaz – Hiccup

オーストリアはグラーツのプロデューサー/DJ、ToupazのニューEPより表題曲。「しゃっくり」って曲名のとおりしゃっくりみたいに引きつった声らしきサンプル(もしかしたらそう聞こえるだけで電子音かも?)が出てきて、なんや往年のDon’t Laughとかそういうのを思い出してしまうが、パーカッシヴなシーケンスの妙と要所要所で登場するシンセのテクスチャが面白くリスニング視点でも引き込まれる。やっぱりこういうベースミュージックはテクスチャが面白いかどうかで聴いてしまうところがあるなぁ。

Scratcha DVA, Natalie Maddix, Scotti Dee, Mad One – Wishlist

ロンドンでグライムやベースミュージックと南アフリカのサウンドを意欲的にフュージョンし続けるプロデューサー、Scratcha DVAのEPがリリース。LightDarkの対比的な二作が同時に出てるんだけど、Lightのほうから1曲。ヴォーカルは結構メロディアスなんだけれどベースラインがちょっと癖のある、中東っぽいスケールで進んでいてものすごく繊細な色合いになっている。etherealなような、大地っぽいような、トランシーさが絶妙! 全体的にLightのほうがいまの気分だけれど、Darkの「Drillers」とかもかっこいいっす。

Tyla – Safer

「Water」が世界的なヒットソングとなった南アフリカのTylaによる待望のファーストアルバム。曲尺はどれもタイトでポップソング然としているものの、この「Safer」のようにカタルシスへ安易に向かわずじりじりと緊張感をたたえながら感情を鷲掴みにするスタイルはとてもクール。かっこいい。「On and On」や、特にラストの「To Last」あたりでAmapiano的な美学をばしっと聴かせているのもぐっとくる。2024年、というか2020年代を代表する1枚として記憶されるべきではなかろうか。

カテゴリー: Japanese