コンテンツへスキップ →

ポプミ会アドバンス(Simon ReynoldsのRetromania読書会)、一区切り

この記事にはアフィリエイトリンクを含みます。

2023年4月から、大体月イチペースでSimon ReynoldsのRetromania: Pop Culture’s Addiction to its Own Pastの読書会をオンラインで開いていた。以前開いていた読書会の延長ということで、「ポプミ会アドバンス」とした。日本語のてごろな文献ではなく、未邦訳の文献を読むからちょっとモチベが高めのひとじゃないと大変そうだな、という思いもあり、「アドバンス」。

原書を翻訳して訳文を読み上げコメントする、シンプルなスタイルでこつこつやっていった結果、イントロダクション、プロローグ、第二章(TOTAL RECALL)を読むことができた。なんだかんだ、みんなDeepLとかGoogle翻訳とかを駆使して読んでいたので、バキバキの英語力がなくても翻訳ツールを使えばまあここまでは読めます。みたいな感じの実感が得られた。

年内はとりあえず一区切り。年が開けて2024年からはもう一章ぶん追加で読むつもり。半分仕切り直しみたいなかたちになるので、新たに参加するならこのタイミングかも。参加希望の方はDiscordのポプミ会サーバーまでどうぞ。

本書は、以前書評も書いた柴崎祐二『ポップミュージックはリバイバルをくりかえす 「再文脈化」の音楽受容史』(イースト・プレス、2023年)の執筆のきっかけになった一冊であり、イギリスの音楽評論家であるSimon Reynoldsが、2000年代に顕在化したというポップ・ミュージックの近過去への執着について、それを享受しながらもどうしても抱いてしまうもやもやを吐き出すように書いている本だ。

レトロ志向に対してReynoldsが抱く不安と不満じたいは、2023年に日本に住む人が読んでもある程度共有できるものだろう。過去の名盤を何度も蘇らせるn周年記念のデラックス盤、過去のサウンドを参照してノスタルジーとたわむれる「新しい」バンドたち、コンピレーションやリイシューを通じて行われる過去の再評価等々。むしろ、ぱっと読むと2010年代の動向をある程度予見しているかのようにも見える。

とはいえ、繰り広げられるインターネット観はさすがに時代がかって見えるし、議事堂襲撃事件への参加ですっかり引いた目で見られるようになってしまったAriel Pinkがキーパーソンとして出てくるし、ここまで読んだ範囲でもさすがに10年のギャップというのを感じざるをえない。本書で根本的になされている問題提起にはいまだ検討に値するものがけっこうあると思うけれど、2010年代にいかにインターネットが、音楽が変わってしまったか? ということを注意深く思い起こしつつ読むべきだろう。その意味で読書会というかたちで、みんなでコメントしながら読むのにちょうどよかったかもしれない。

もうしばらくはRetromaniaに付き合っていくけれども、Reynoldsは来年その名もFuturomaniaなる書籍を出版する予定だ。こちらも横目に見ていきたいと思う。

カテゴリー: Japanese