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2023年のベストトラックを50曲選びました。もうここ数年新譜を追うのが心身の健康の問題もあって大変厳しく、50曲選ぶのだけでも大変だよ~と思ってましたがつくりだすと意外と音楽聴いてるな自分……となります。とはいえ、「音楽ライター」を名乗るにはあまりにも弱すぎる。よわよわ。2024年は、もうちょっとがんばって「音楽」に向き合いたいと思います。

さて、50曲のプレイリストは上掲のSpotify/Apple Musicの通りですが、10曲ピックアップしてコメントしたいと思います。

北村蕗 - amaranthus feat. 梅井美咲

山形を中心に10代の頃からピアノやギターの弾き語りを中心に活動を開始し、現在は東京に拠点を移してエレクトロニクスも取り入れたパフォーマンスを行う北村蕗がはじめて正式に音源をリリース。ピアニストの梅井美咲を招いた「amaranthus」は、その歌声もさることながら、繊細で奔放なメロディラインを支えるアレンジとプロダクションがいきなりものすごいクオリティで、素晴らしい「デビュー」作(といっていいでしょう)だった。そのままあれよあれよとフジロック出演や冨田ラボからのフックアップ(ドラマ「地球の歩き方」にて冨田ラボがサウンドトラック発表! | 冨田ラボ – Tomita Lab)にまで繋がり、コンスタントにリリースされるシングル群もふくめて、2023年の躍進がめちゃくちゃ印象的でした。

audiot909 - 秘密 feat. CHIYORI

ジャパニーズ・アマピアノのパイオニアことaudiot909のアルバム『Japanese Amapiano The Album』も全編素晴らしかったですが、アマピアノのクールなアツさを日本のR&Bの文脈と見事に接合したような「秘密」は出色の出来。歌モノポップにもアンダーグラウンドにも振れるダンス・ミュージックとしての懐の深さに身を預けつつ、日本でそれをやり抜くということの意義に真摯に向き合った成果として記憶されるべき1曲。

Anitta - Used To Be

2022年のコーチェラでファヴェーラを背景にダンサーたちモダンなポップとしてのファンキの存在感を示したパフォーマンスも印象的だったブラジルのポップスターAnittaのEPから1曲。聴いてみればわかるように、おなじみのリズムパターンを中心に据えつつもさまざまなジャンルの影響をスマートに消化したエクレクティックなサウンドになっていて、特にこの曲はR&B的なメロディラインやコーラスワークもキャッチー。2023年はNyege Nyege Tapesからリリースして一躍注目を集めたDJ Kなんかをはじめとしてアンダーグラウンドなファンキのサウンドに熱い視線が注がれていた感があるが、メインストリームで堂々たるポップ・ミュージックとして鳴り響くファンキも好きです。

Skrillex, Fred again.. & Flowdan - Rumble

本当は年間ベストといったらコーチェラでのPangbourne House Mafia(Skrillex, Fred again.., Four Tet)のDJセットだろと思うんですが、まあそれはそれとして、年始にリリースされたこのシングルは本当によかった。その後のアルバム2枚もふくめて、Skrillexの功績について考えることの多い1年でした。シンプルで削ぎ落とされた構成ながら、ひとつひとつのサウンドの細かいレイヤーがつくりだすテクスチャ―の変化が緊張感ある響きをつくりだす職人技は聴けば聴くほどビビる。ものすごくワイルドな印象なのに、選ばれているサウンドそれぞれはかなり繊細かつストレンジで、だまし絵みたいだなと思う。

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Courtesy - Something feat. sophie joe & August Rosenbaum

デンマーク出身のアーティスト、Courtesyがリリースしたアルバム『fra eufori』は90s~00sのダンス・ポップをドラムレスなエレクトロニック・ミュージックに翻案するカヴァーアルバムで、ダンス・ポップっていうかEnyaも2曲とか入ってて選曲が納得感とおもしろどっちもあって、かつCourtesyのアナログシンセのサウンドを多用したコンポジションがもともと好きだったこともありよく聴いていた。トランスがリバイバルしていたり、あるいはY2Kなダンス・ポップも再興していたり(Planet of the Bassってありましたねぇ…… あれなんだったんだ)する時代の流れを感じつつ、そこからちょっとずらしたアプローチが絶妙。

NiziU - HEARTRIS

NiziUの韓国デビューシングルはRealSoundで記事も書いたんだけどすごく塩梅がよくて、韓国語だしちょっと懐かし目のK-POPっぽい感じ(初期TWICEとか……)かしらと思うと、ちょっとコード進行とかアレンジにJ-POPっぽさも残っていて、Kポっぽい風合いのなかにアニメ調のカットが入ってくるMVもあわせて派手さはないが結構凝ったことをしている秀作。しかし秀作と言ってすますには、良すぎる! なんだかんだめっちゃ聴いてしまった。

伊藤美来 - 点と線

あほほど聴いたという意味では声優アーティスト・伊藤美来のシングル「点と線」も秋から冬にかけて延々とヘヴィロテだった。三拍子と四拍子のクロスするポリリズムを下敷きにした壮大でシネマティックなアレンジがどツボ。アニメ「星屑テレパス」のOPで、EDはサンドリオンが歌唱してやぎぬまかな、パソコン音楽クラブ、phritzが制作というのもなんかすごかった。アニメはTVerとFODでしか配信していなくておいてかれてしまいましたが……。

マカロニえんぴつ - 悲しみはバスに乗って

サラリーマンの悲哀を歌うという点である種ユニコーンイズムを継承するようでいて、ひょうひょうとしたユーモアのかわりに徹底的にウェットで痛みにあふれた言葉を容赦なく並べたこの曲はちょっと衝撃でもあった。「まだまだまだぼくは青二才、赤ん坊は一歳/涙で滲むは給料明細」というアナクロで陳腐な「世知辛さ」から、「あ、そういえば」の一言を蝶番にして「今日はあいつの命日だ/なんで死んだんだっけ/どうして死ななきゃいけなかったんだろう」という深い「悲しみ」にためらいなく突っ込んでいくこのドラマが、詞全体に漂うどうしようもなくコンサバな空気感(「ありきたりな幸せ」)をかき乱していて、そのバランス感覚に戦慄する。

MVは正直いってあんま好きではない

Batu - Through The Glass

ブリストルのプロデューサー、Batuは今年2枚のEPを出している(はず)で、どちらも内容が素晴らしかったのだけれど、5月の「For Spirits」のラストチューンを。サンプルのシンプルなループを軸にドローンや細やかなリフで常に動きをつくりだし、後半からあらわれるベースラインにダンスフロアの残影をしのばせながらも、カタルシスに達してしまうことは避ける。それでも高まり続ける緊張感がふわっと緩和されるさりげないラストはさすが。4分弱の見事なコンポジション。

パソコン音楽クラブ - Day After Day feat. 高橋芽以

アルバム『FINE LINE』を締めくくる1曲としてこんなに完璧な曲もないだろうと思える1曲。前作から一転ポップでダンサブルにハジケた印象の強いアルバムだけれど、スキットを挟んだラスト3曲の展開は、実は『See-Voice』と本質的には通底する物語だったのかもしれないと気づきを得ながら日常に戻っていくようで見事。Overmonoの面影も感じるような端正だがアップリフティングなダンスビートに、抑制的ながらエモーショナルなメロディと言葉が噛み合った完璧さもすごければ、高橋芽以(LAUSBUB)の歌声も光っていて、2023年折に触れて思い出した1曲。

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