隔週で新譜を中心としたプレイリストを共有していきます。「今週の新譜!」という速報/時事ネタってよりは、直近数ヶ月で聴いたものをゆるっとキュレーションする感じです。
Apple Musicのプレイリストも添えたいんだけれどいまアカウントがなくって。どうしたらいいすかね?(アカウントなくてもプレイリストつくれる?)
以下、各曲かんたんにコメント。
Takara Araki - Garbage (A Housewife’s Nightmare)
神奈川在住のTakara Arakiからの新曲で、久々の作品(2020年のシングルPerfect Revengeが好きだった)。同じく収録のInterludeと合わせて、フィーレコと声の表現とダークでエレクトロニックなサウンドが印象的だけれど、日常の陰鬱とした感情を凝縮する歌詞もすごい。この例えが正しいかは知らないが、もはやFrankie Teardropみたいな。ぞわぞわしながら背筋を凍らせながら聴いてください。
33EMYBW, Batu - Predator Chorus
SVBKVLTから、上海を拠点とする33EMYBWの新譜がリリース。ストイックでインダストリアルなサウンドに満ちているけれども、音色のフェティシズムに陥らずにシーケンスや構成上の面白さがフックになって聴き飽きない。この曲はBatuをフィーチャーしているが、ほかにもMarina Herlop、Forrest Gander、oxi pengがアルバムに参加している。yukinoiseさんによるメールインタビューがAVYSSに載っているのであわせてどうぞ。
DJ RaMeMes (O DESTRUIDOR DO FUNK), DJ PRETINHO DE VR, DJ RAMOM, DJ LC DA VG - TAMBORZIN DE VOLTA REDONDA
バイレファンキの注目プロデューサーのひとり、DJ RaMeMesを筆頭としたアルバム。歪んで飽和したサウンドはもはや享楽的なダンス・ミュージックというよりはアグレッシヴなノイズミュージックに近い。ローファイで生々しいサウンドが偶発的なものというよりもはっきりとした思想をもって鳴らされてる感じがありおもしろい。家で聴いてても耳が痛いのにクラブで聴いたら耳死ぬんじゃないか(その意味ではDJ Kみたいな高音ピキピキ系のファンキも相当だろうが)。
Marina Herlop - Cosset
カタルーニャのMarina Herlopのニューアルバムから一曲。多重録音された声のハーモニーがもたらすカタルシスに心奪われるが、メロディの節回しやビートに含まれるリズムの緩急が(展開のドラマチックさと細かなニュアンスの豊かさを保ちつつも)ヒプノティックに感じられるのが好きなところ。
Jlin, HIIIT - Open Canvas
ジューク/フットワーク・シーンを超えて、リズムの探求者として独自の道をゆくJlinが、シカゴのThird Coast PercussionにつづいてオランダのパーカッションアンサンブルHIIITとのコラボを最近つづけてリリースしている。HIIITがおもしろいのはさまざまなブリコラージュ的パーカッションも演奏に使っているところで、パーカッションのサウンド表現の面白さが堪能できる。演奏動画もあわせてどうぞ(同チャンネルにはほかにもJlinとHIIITがコラボした楽曲のパフォーマンスがアップロードされている)。
unkle G, Gavsborg - unkle G
レフトフィールドなダンスホールを鳴らすEquiknoxxxのプロデューサー、Gavsborgはさまざまなサイドプロジェクトを精力的にリリースしているのだが、自身マイクをとるunkle Gは自分のプローデューサーとしての日常をアンビエント的なリディムにのせて淡々と紡ぐ(Popcaan Said My Riddims Aren’t Goodと言われるとさすがに元気だしてくれと思う、あんたかっこいいよ)。プロジェクト名を関したこの曲はピアノのループを中心に繊細なサウンドのレイヤーで聴かせつつ、「毎日毎日スタジオにいるんだわ……」と繰り返す。はまってしまう。
Ragazza XXI, Climate Collapse - Las Cruces
メキシコシティ出身、モントルイユ(フランス)拠点……でいいのかな、のRagazza XXIのアルバムが、中南米のリズムを探求しつつさまざまなアーティストとコラボレートして豊かなサウンドに結実した作品でよかった。ポリリズミックな冒頭の'01-800’(Dj Fucciとのコラボ)も良いし、力強い4つ打ちにうねるようなベースでグルーヴを巻き起こしていく’Deslave’(El irreal Veintiunoとのコラボ)も良いが、ヒス・ノイズと環境音のなかにビートが溶け込んでいくClimate Collapseとの’Las Cruces’がばりよかったっす。
Tropkillaz, Barbatuques - Boa Noite - Rework
ブラジルの人気プロデューサーデュオ、Tropkillazが活動開始10周年を記念して過去の作品をリワーク。Nia ArchivesもサンプリングしたBarbatuquesのBaianáをサンプリングした楽曲をぶっといマイアミ・ベース直系のオールドスクールなバイレファンキにファインチューン。アルバム全体的に、2010年代のフェスティヴァルトラップとかああいう感じの大味さ/大胆さがあって、味わい深い。
Cesco, Hamdi - Swing King
名だたるDJたちがフェスティヴァルでプレイして話題になっていた楽曲がついにリリース。←の記事で140 BPM renaissanceとか言われているように、オールドスクールなUKのダブステップを思わせるストイックさと、現代的なダブステップのプロダクションが融合した1曲。地味だけど破壊力は抜群。くせになって聴いちゃう。クラブで聴きたいな。
Jon Casey - SPLURGE
ダブステップのプロデューサーでは最近Jon Caseyという人がいいなあと思っていろいろ聴いていて、最近のシングル’Your Lovin’‘もすごい好きなんだけど、4月に出ていたEPからのこの曲はおもしろ重低音祭りという感じでくせになる。ダブステップのエクストリームなプロダクションは、まあ容易にフェティシズムに堕してしまう可能性もあるんだけど、やっぱり面白い。
Coki, Leotrix - Last Nite
Bengaとのダブステップ・クラシック「Nights」で最もよく知られているだろうCokiがオーストラリアの若手プロデューサーLeotrixとコラボ。Flowdanをフィーチャーしたタイトル曲DIY(Old Skool MixとDubstep Mixがあり)もよいのだけど、このLast Niteは基本的な構造がオールドスクールなUKのダブステップなのに上モノがColor Bass風に倍音がキラキラしていて絶妙におもしろい。Cesco&Hamdiの曲もそうだけど、140Renaissanceというか、もう完全に違う音楽になっちゃってたような気がしていた「ダブステップ」が再構築されつつあるんだなー。
beastboi. - TOO TURNT
ノースキャロライナのプロデューサーbeastboi.のシングル。カットアップ・ファンクのビルドアップからバキバキのドロップにいく落差に惹かれる1曲。トークボックス好きが一気に鬼ベースゾーンに打ち込まれる感じがたまらないすね。
Billlie - the soul savior ~ i don’t need a superman
バキバキに派手なケレン味の効いたアレンジと渋めの歌メロの組み合わせ、一番好きなやつじゃ~んって感じで気にいったっす。K-POPマナーというのが如実に出ていると嫌いじゃないけどうーんってなること多い(ヴァースとコーラスのブリッジでちょっと捻ったコード感とメロ入れてきたりとか)のだけれど、そういうひねりは抑えめでわりとまっすぐな組み立てになってるのも好き。
STAYC - LIT
STAYCの日本オリジナルシングルがキュートなジャージードリルで、こんなに小洒落た曲でいいの! ってちょっと思っちゃった。でもSTAYCの日本語曲はPOPPYもよかったもんな。果たしてジャージークラブ/ジャージードリルの流れはどこまで続くのか!? もうちょっと続きそう。2stepやUKGみたいに定番として定着するのかもしれない。
ぺろぺろきゃんでー - トットちゃん
最近「話題のGAL」がバイラルヒットしていた兄妹デュオぺろぺろきゃんでーの新曲が即Eテレで流せるレベルの直球でキッズをエンパワーする内容でよかった。タイトルが示唆する通り、教室ではみだしものになってしまっても外に居場所を探しに行こうという曲。ちょうど映画「窓ぎわのトットちゃん」公開のタイミングいうこともありいい感じっす。
Tkay Maidza - Our Way
ジンバブエ出身、オーストラリアのシンガーソングライターTkay Maidzaのアルバムがよかった。KAYTRANADAプロデュースの2曲(このOur Wayと、あとGhost!)がいつものKAYTRANADA節でよいのと、アフロビーツ風のRing-a-Lingや、オーストラリアということでFlumeをフィーチャーしたSilent Assasinの変な電子音祭りも良い。Tkay Maidzaを知ったのは最近Air Pods ProのCMでPixies ‘Where is My Mind?‘のカバーが流れててばり良かったからなのだが、もっとヴァーサタイルな堂々たるポップアクトだと知る。
Arlo Parks - Jasmine
2023年のトピックは? というとCoachellaでのJai Paulの衝撃的なカムバックを挙げざるをえない(あとCoachellaといやあFour Tet + Skrillex + Fred again..ね)のだが、そんななかArlo ParksがJai Paulの名曲Jasmineをカバー。Arlo Parksのヴォーカルやコーラスワークが冴えていて、メランコリックなマシンファンクとしての側面をぐっと引き出したアレンジも良い。
松木美定 - 瞳
シンガーソングライター松木美定の待望のフルアルバム『THE MAGICAL TOUCH』から一曲。ジャジーで多幸感のある、これからの季節にぴったりの楽曲がつまったアルバムで素晴らしいんですが、そこからあえてローファイな弾き語り「瞳」を。他の曲がすごく贅沢なサウンドにいろどられているなかにふわっと入ってくるこの曲にも松木さんのメロディメイカーぶりが封じ込まれていてすごくよいです。
bo en - Paler, Still Paler
アルバム『Pale Machine』の10年越しの続編『Pale Machine 2』は全曲胸熱でしたが「Pale Machine」(曲のほう)をよりメランコリックにレンダーしたこの曲にちょっと胸打たれてしまい。おれも年を取ってしまったのか。なんて思いつつ。どんどん顔色が悪くなっていくよ。
odol - 本当の顔
odolのアルバムが評判よくて聴いてみたらほんとうによかった。ストリングスで壮大さを演出していくのがいやらしくなく、このバランス感は素晴らしい。「本当の顔」でもその魅力は出ているけれど、白眉は後半に出てくるピチカートの使い方かも。アルバム全部いいっす。