深夜、喉がからからになって目覚める。飲み物と、せっかくなので明日の朝食を探しにコンビニへ向かう。が、コンビニが閉まっている! オフィス街のコンビニは閉まりがち。おれは学んだ。ちょっと歩いたらミニストップがあったので、飲み物とパンとアイス買って宿に戻る。チョコミントのアイスって場合によってはなんか変な風味が出る(妙な香ばしさというか)よな。
リヒター展。まあ「見ておきたい」程度のモチベーションで、「実際みたらまあまあだったわ」みたいなことになるだろうなって思ったんだけど、割と真剣に観てしまった。2時間がっつりかけて、しつこく見ていた。アブストラクトペインティングはなんだかんだ面白い。最初の5枚で40分くらいかけちゃった気がする。
なんも知らんなりに、リヒターがやりたいことというのを延々考えながら見ていると、やはり「イメージ」(と和製英語で言うのがいいもんなのかわからないが)の提示なんだろうなという気がする。写真を絵画に。あるいは絵画を写真に。そうしたメディウムの変換を通じてもなお維持される、物理的な支持体に依存しない質。写真のドキュメンタリー性(インデックス性?)や、絵画のマチエールがそれぞれのジャンルにおいて担保する真正性に対する拒絶。みたいな。そうして抽出された「イメージ」は、たとえば「○○のイメージ」という指示作用から切り離された、ただそこに存在する不気味ななにものかでしかなくなる。徹底的に非人間的なリヒターの自然観はそのまま「イメージ」の世界にも適用される。風景画や静物画の重要性というのは多分そのあたりにあるんだろうなと思う(その意味で、不法占拠された住居を描いた作品の不気味さをタイトルのマジックのように説明するキャプションはちょっとずれていて、そもそも世界は言葉の助けがなければ不気味であり、「イメージ」もまた不気味な世界のひとつである、ということなんじゃなかろか)。
そうした「イメージ」のモデルがガラスであり、あるいはグレーペインティングであり、あるいはカラーチャートなのだろう。それ自体はなにも指示しない空虚として、あるいは中立的で特定の色調を欠いた無としての、「イメージ」。とはいえ、入ってすぐのガラスのインスタレーション?はあまりにも図式的というか、コンセプトを提示しましたみたいに見えてしまうのだが……。
メディウムなりジャンルの固有性、あるいは外部からもたらされるテクストが「イメージ」が「○○のイメージ」たりうることを保証してしまうことに対して、リヒターは深く抵抗しているように思える。《ビルケナウ》の展示が、もととなった写真、連作4枚、連作の写真複製、そしてグレーのミラーで構成されていたことは、「○○のイメージ」の装いをはぎとって「イメージ」へ還元するために必要だったのだろうと思う。単に「○○のイメージ」を覆い隠して不可視にすることだけでは、表象への批判たりえない。単に絵の具で覆い隠せば、それは絵画の文脈のなかでなんらかの正統性が保証されてしまいかねないからだ。不気味な空虚としての「イメージ」へたどり着くには、メディウムのあいだを変換してゆかなければならない。
その意味でオイルオンフォトはやっぱりおもしろい。多くのオイルオンフォトが日付をタイトルに付してそのドキュメンタリー性(いや、あれって撮影の日付ではないのか? まあいいか)やスナップショットの親密さを示唆しながらも、油彩と写真が接触してコンフリクトを起こすことで、「イメージ」が発生する。みたいな? みたいな。
みたいなことを延々考えながら見てたら、2時間経ってたとゆうことでした。コレクション展も一応見た。
パレスサイドビルのカレー屋で昼食を食べたあと、そのまま神保町へ向かう。三浦さんとひさしぶりに会った。いやほんと、2年ぶりとかじゃないか? 下手したらもっとか。何度かZoomで話したり電話したり、TALK LIKE BEATSに出てもらったりとかあったけども。YCAMの石若さんと松丸さんの公演がよかった話をする。
少し遅れて、木下さんとhonninmanがやってくる。昨晩連絡があり、東京来てるならご飯でも、みたいな話になっていたのであった。せっかくだし三浦さんと一緒に会ったらおもしろいのでは? と思って呼んだのだ。4人でいろいろ話した。久しぶりに人とこうやって話したからとても楽しかった。考えてみると、木下さんだけじゃなくてhonninmanも会って話すの初めてで、「うわぁ、リアルhonninmanだ!」となった。いや、ライブは見たことあるんだけど。神保町の喫茶店をハシゴしていろいろとお話。いきなりこんながっつりしたこと話すんだ、みたいな話題も多くて、ひきずられて自分もいろいろ話した気がする。
https://open.spotify.com/episode/6ImTh9SGzUzrvLz1c8rhz3?si=90a7c2cfdd35457e
屈指の神回ことTALK LIKE BEATS木下百花さん回(あと中編・後編もあります)。
三浦さんは諸事情で途中で帰られたのだけれど、そのあともしばらく3人で話して、最終的には「柴田聡子はマジですごい」ということで落ち着いた。また会いましょう、と誓って解散。
神保町から東京駅まではタクシー。思ったよりちょっとかかったけど問題なし。山形までの新幹線のなか、グロッキーになってしまって、意識が何度か飛んだ。母親が駅まで迎えにきてくれたのだが、「飛行機で福岡まで行って、そこから山口に行くのもアリ」と言われ、ああ、最初から相談しておけば……と思った。まぁ、東京に寄りたかったというのも本音なので、難しいところではあった。
文字通り長い旅だった。往復15時間も新幹線乗ってたよ。はぁ……。