11月7日
夜行バスで上野に着き、そのままネカフェに入る。当日午後に予定されていたとある取材に向けて改めて予習。ほんとうはちょっと寝ようかと思っていたけれどあんまり寝る気にはなれず、たんたんと資料を読み曲を聴く。それが予習になるかどうかはわからないけれども緊張をほぐすにはそうするほかない。マジでガチの、「この企画、正気か?」と二の足を踏んでしまうようなでけぇ案件なのだ。
やばいよ~ と思っていたらtofubeatsから連絡があり(Twitterに漏れ出していた己の緊張っぷりをみかねて)、 TTHWのパーゴル回でおなじみの事務所にお邪魔してちょっと世間話をする。BGMにApple Musicから高野寛『City Folklore』をかけていたら流れでトーフが高野寛をいっぱいかけだしてなんか高野寛祭りみたいになった。『City Folklore』は名盤です。
シティポップがどうだこうだと言っているなかで「ポップ」じゃなくて「フォークロア」なんだというタイトルがまず良い。懐メロ再評価的なシティポップもネオシティポップも個人的にはそこまでのれなくて、名曲は名曲! と思いつつ、そうした動向ももちろんふまえたうえで、やはり「いま」を如実にうつしている音楽のほうが好きだ。土岐麻子『PASSION BLUE』なんかもその点でほんとうに素晴らしい。
よき時間に取材に向かう。これはまあ、記事になったら書く。とんでもなかった。「こんな経験させてもらってもいいの?!」と。
その後、宿にチェックインしてちょっと休み、下北沢へ向かう。高井息吹、mekakushe、浦上・想起+松木美定の3組が出演するライヴ。前半に高井→mekakushe→浦上松木の順で20分ずつ演奏し、休憩を挟んで後半もまた同じ順で20分ずつ。2回まわしみたいな感じの変則的なタイムテーブル。最後まではいれなかったのだけれど、このタイムテーブルのおかげで3組とも見れた。3組ともよかった(全部見てないのにいうのもなんだけど)。特に高井さんの声のダイナミクスと質感のバリエーション豊富さが凄かった。のみならず、フェイクっぽいヴォーカルのフレーズをルーパーを使ってドローン的に演奏にとりこんでるのが、シンプルなのにめちゃくちゃよかった。歌声のサウンドとしての豊かさあってこそのパフォーマンス。
会場を後にして「かわいいウルフ」の小澤みゆきさんと中華を食べる。初対面ではなく、下北沢B&Bでの「#わたしたちのやっていき」のときお会いしていたのだけれどちゃんと話してなかった。「インターネットしんどい」みたいな話ばっかりしていた気がする。なんか流れで「おれのツイッター論」みたいなことまで熱弁してしまって、おれはあのときむちゃくちゃダサかった。小澤さんすみませんでした。
宿に戻って温冷浴をやって寝た。
8日
チェックアウトまでマッサージチェアでだらだらして宿を出る。ここでも誤算だったんだけどほんとはマッサージチェアでだらだらじゃなくて寝るべきだった。めちゃくちゃ眠い。いやマッサージチェアで寝る、という合せ技も可能だけど。いずれにせよやはり睡眠は大事。
お昼はイシヅカユウさんと会う。特に用事があるというわけではなくたまたまタイミングが合った。初対面だったのでご本人目の当たりにして「本物だァ!!!!!」となり。よくファボらせていただいております……。特になにかトピックがあるわけでもなくふわふわとおしゃべりしただけだったけれど畑違い(音楽関係とかライターとか編集とかではない)の人とこういうふうにしゃべるの意外となかったなと思い、いやもちろんMV出たりご本人も音楽好きだったりして音楽の話だってしたんだけれど、不思議な体験、という感じ。
その後ネカフェで仮眠してやや浅い時間帯に渋谷の磯丸水産で軽く呑む。Twitterで知ってるメンツとテーブルを囲んでわいわいやっとるあいだにいい時間になってきて、渋谷CIRCUSでのNEO GAIA LEGENDへ。
なぜか最近メディアでとりあげられまくっているvaporwave。ムーヴメントとしては2009年を起点とするもののめまぐるしい変化を経た末に2010年代後半はそのポップ化、マス化が顕著になっている。もっと怪しげなムーヴメントだったものが、2010年代というディケイドのいち側面を規定するカルチャーになったわけだ。「思えば遠くにきたもんだ」って感じで総まとめするには悪くないタイミングだと思うものの、「いま流行ってる」みたいな扱いになるとちょっとわからんようになる。
そんなもやもやをうっすら抱えつつも体験したNEO GAIA LEGENDはかなり良いパーティで、vaporwaveといううさんくせーネットミームがこれほど多様で豊かな音楽性を包含するカルチャーになったんだと思うと凄いことだと思う。この多様さは反面でvaporwaveというジャンルのサウンド面でのわかりづらさをつくりだしてもいて、「別にもうこのレッテルにとらわれる必要もないんじゃないの? 次いこ次」とも考えてしまうのだけれど、このレッテルなしにはこのアクトたちをこうして見るなんて体験もなかったんだな……といわば「コミュニティとしてのvaporwave」に思いを馳せたりも。eccojams的なvaporwaveのクラシカルなスタイルをがんがんにアップデートした death’s dynamic shroudのライヴにはマジで感動。あと青龍WESTことパ音の柴田さん、あんた天才だよ。凄いライブだった。
翌朝、パーティが終わるちょい前くらいに体力がマジもんの限界を迎え「終 制作・著作/NHK」の文字が視界にちらついてきたので、CIRCUSをあとにしてネカフェに舞い戻る。そこではさすがに爆睡した。睡眠時間自体は短かったけれど。昼の高速バスで山形に戻るので、多少でも寝れてよかった。なんか変な2日間だったな……と思いながら、バスでも寝た。