Ariana Grandeの新曲。もはや『Sweetener』よりも話題をかっさらっていると言える「thank u, next」に続く「imagine」も過去の恋人たちへのメッセージで、こちらは甘美な恋人同士の日常を描いたかと思いきや、コーラスでは「そんな世界を想像して」とか「そういう世界を想像できないの?」とちゃぶ台を返すようなフレーズが出てくる。失われた関係を責めるようでもあるけれど、「想像して」と繰り返すアウトロは元彼たちに「いい思い出にしよう」とお願いするようでもあり、自分自身に「そう想像しておこう」と言い聞かせているようでもある。
リリックビデオもさりげなく凄い。なんでデータモッシング、と思いつつ、データが欠如してサイケデリックでカラフルなイメージになっていく様子が、かつての関係を理想化しようとする曲の内容とあっているのが面白い。最後の「Imagine it」のリフレインでブラックアウトするところもいい。歌詞のなかにも「Click, click, click and post」とinstagramを彷彿とさせるラインがプリ・コーラスにあったりして、SNS時代の人間関係を背景としたこの曲にはさりげなくフィットしたビデオだ。ちゅーか、単純に、めっちゃエモーショナルじゃない?! 崩れ行く氷河がさらにモッシュされて二重に崩れていって美しいパターンが生まれていくの素晴らしい。こいつら(Ariana Grandeとそのチーム)マジで凄い。このSNSへの適応とクリエイティヴィティの発露にもはや言葉もない。
サウンドも結構変で、低域はあんまり使わずに、かわりにステレオ感を思いっきり強調して残響成分とかハモりの配置に趣向を凝らしている。2分20秒のあたりから出てくるピアノの音が最初アタック削れていたり、音数が少ないバラードでこのスケール感を出せるサウンドデザインとアリアナの声のオーラが凄い。細かい話をすると、基本的には3連の三拍子(正確にはすごくゆったりした6/8か)にのせたメロディなのに、「Click, click click, and post~」のプリ・コーラスのところだけ付点八分っぽい譜割りなんだよね。するとそこだけスピード感が上がるの。そのラインに続いて「Quick quick quick, let’s go」ってくるあたりなんか、デート中にインスタ映えするところ見つけて急いでセルフィを二人で撮って、アップして、「じゃ、早く行こう」って去っていくみたいな情景が浮かんでくる。おもしろい。