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 星野源の新曲「アイデア」が配信リリースされた。0時の解禁とほとんど同時に耳にした「アイデア」は、そのタイトル通り、予想外のアイデアがつぎからつぎへと繰り出される名曲だった。

 星野源らしいエキゾティックな旋律と折衷的なバンドサウンドが印象的なワンコーラス目から一転、フットワーク/フューチャーベースのニュアンスを巧みに取り入れたダンスサウンドへと展開し、素朴な弾き語りを経由してふたたび星野源印のサウンドへと回帰する構成。大胆に表情を変えるサウンドは、一枚のEPを一曲に凝縮したかのような印象を与える。

 この展開は、まさしくこの曲が伝えようとすることばたちのためにあつらえられたものだ。光と影のように対照的に配置された1番と2番の歌詞はサウンドの変化と呼応し、アコギの音色と歌声が響くブリッジもまた、親密さに満ちたことばに寄り添っている。そこから浮かび上がってくるのは、人びとの生活そのもの、日々のあゆみそのものを音楽や響きにまつわる隠喩によって描き出しながら、それらをまさに音楽によってそして前進させようという意志だ。

 オーガニックなバンドサウンドから、ベース・ミュージックを経由して大団円に至る楽曲構成は、Donnie Trumpet & the Social Experiment「Sunday Candy」を思わせる。Chance the RapperとJamila Woodsをフィーチャーしたこの曲は、the Social Experimentを中心とするシカゴのミュージシャンたちの折衷的なセンスを存分に発揮したもので、ChanceやJamilaをはじめとした界隈のラッパーやシンガーの仕事に通底するポップさを凝縮した、象徴的な一曲だ。

 しかし、「Sunday Candy」の根底にあるのがゴスペルと信仰だとすれば、「アイデア」の根底にあるのはかわりに星野源自身のキャリア(いつも以上に象徴的に鳴らされるマリンバの音色は彼の原点、SAKEROCKを思わせる)と、いかにしていまの世の中に希望を立て直すかという問いなのではないかと思う。

 以前tofubeats『FANTASY CLUB』についてのレビューを書いたとき、まさにChance the Rapperを引き合いに出して、「信仰による救済」を持たない日本人はどのように「祈り」を捧げるのか、という問題に対する答えがあのアルバムにはある、と評したことがある。それと地続きに、「アイデア」もまた、信仰なき世界でどのように祈るか、どのように希望を語るかに対するひとつの答えだと言えないだろうか(そういえば、同様のことを、James Blake「Don’t Miss It」をめぐる文章でも「信仰の不在」における「救い」について書いたな)。

caughtacold.hatenablog.com

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 まあそういった解釈については僕などよりも星野源の曲にもっと親しんだ人たちのほうがよほど的を射た案を提示してくれるに違いない。この文章はあくまで楽曲の構成上思い浮かんだ「Sunday Candy」と「アイデア」の比較を単に試みてみただけだ。ただこの曲がささやかな希望を人びとに届けることだけはたしかだろう。尻切れトンボですが、また。

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