映画「ザ・ビートルズ Get Back」で用いられた音源分離技術を応用し、これまで不可能と思われていた『リヴォルヴァー』の大胆なリミックスが実現したのが昨年(2022年)。その詳細については自分でも以下のような記事にまとめた(後半はビートルズ関係ないけど)。
AIがもたらす音楽の未来は? ザ・ビートルズ『Revolver』を生まれ変わらせた音源分離技術から考える | CINRA
ここから『リヴォルヴァー』より前の作品のリミックスが行われていくのだろうとは思っていたけれど思ったよりも早くその成果が届けられた。『ザ・ビートルズ 1962-1966』(通称赤盤)及び『ザ・ビートルズ 1967-1970』(通称青盤)である。
実際に聴いてみるとたしかにすごいんだけれど、やろうと思えばどこまででもやれちゃう時代、「ここまでにしとこう」というラインをどこに設けるかという判断はなかなかシビアだっただろうな~と感じる点も多々。どーかんがえてもパートごとに音源を分離した後のほうが課題は山積みなわけで、ジャイルス・マーティンがんばったな……と思う。
わざわざあの曲のこのミックスがよくて~とかこれはあんまりで~とか書き連ねるつもりはないけれど、ただ「In My Life」を聴いてちょっと思ったことがある。
この曲のリンゴ・スターのドラムって特に平歌部分はなかなか変なパターンを叩いていて、3拍目裏にだけ出てくるハイハットが不思議な印象を与える。もとから変だな~とは思っていたのだけれど、2023年ミックスでドラムキットのパンニングが現在のオーソドックスなそれに近づいた結果、その変さがもっと強調されている気がする。
なんて感じるのはおれだけかもしれないけれど、現代の典型的なステレオ感というのは、それ自体が楽器の響きに対して「このようであるだろう、あるべきだ」という予断をもたらすふしがあったりするのかな。などと思ったりするのであった。