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埼玉県小川町のカレー屋「CURRY & NOBLE 強い女」は名前に違わずヤバかった

 えー、本日の日記は特別編ということで、埼玉県比企郡小川町にできたばかりのカレー屋さん「CURRY & NOBLE 強い女」訪問記です。パキスタン風の無水カレーを出すこのお店、店主はおれの学部時代の同期で、卒業後はライヴハウスのブッキング担当などをしていた。そんな彼女がカレー屋をはじめる、しかもすげぇ名前で、というのは寝耳に水の話だった。たまたまいい時期に東京に滞在する予定だったので、「強い女」という強烈な名前に好奇心を抑えきれなかったフォロワーなどと共に埼玉まで脚を伸ばしたのだった。

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 具体的にお店についてレポートするその前に、小川町についてわかる範囲で説明を。小川町は東武東上線の終点。池袋から1時間ちょいくらいで行ける適度な田舎。「郊外」というには「山」すぎるけど、マジの「田舎」と言うほどでもなく、きっちりと開発されている印象だ。2011年の震災をきっかけに移住者が増え、都心への交通の便がよいこともあって家庭を持ちはじめるくらいの世代が結構チェックしている町らしい。また、小川町を含む比企郡一帯は野外アクティヴィティ向けのレジャースポットを多く抱えているらしく、同行者のひとり(レトリカ松本氏)は小川町にパラグライダーを体験しにきたことがあるらしい。

 というとなかなか賑わっているようにも思えるが、実際にはシャッター街化が進んでいる。商店街らしい商店街があるわけではないのだけれど、駅から「強い女」に向かう道中は空きテナントや空きビルが目立った。逆に言うと、それだけなにかを起こす「すき間」が街のなかにあるわけで、同行者たちはかなり興味深く物件を物色していた。単純に住もうと思うと人気の上昇に伴っていい物件が見つかりにくくなっている、と「強い女」の店主は言っていたけれど、それでも家賃相場はかなり安いし、あるいはリノベーションを前提に物件探しをすると掘り出しモノ――具体的には「強い女」が入居した物件――が見つかるらしい。

 ようやく本題。「強い女」は、通りを歩いていると前触れなくいきなり登場する。淡い青のファサードと店名を告げる窓のカッティングシートが洒落ていて、「すき間」だらけの街のなかにすっぽりと収まりつつも強烈な存在感を放っていた。

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 空き家を完全DIYでリノベーションした店内は、無塗装のコンパネをところどころ残した手作り感と、肝心なポイントはスマートにキメるバランス感覚が心地よい。

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 店内はカウンターのある土間と、板張りのスペースにわかれている。それがまるでステージのようなので、小さなライヴやトークイベントなんかにはうってつけだろう。話によると、近い内にアップライトピアノを店内に置く予定とのことで、アコースティック中心のライヴイベントはもちろん行っていくつもりらしい。(二枚目で微笑んでいるのが店主である)

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 肝心のカレーは鶏肉がたっぷりはいった、トマトベースの無水カレー。カレーには詳しくないけれど、辛さを推すというよりはトマトの酸味と肉のうま味をスパイスで引き立てるやさしい味だった。さらに、ちょっと変わった風味のする岩塩を「ちょい足し」することで味のインパクトががらっと変わる。酸味のニュアンスを楽しむカレーから、シャープなうま味が食欲をそそるカレーになって、結構面白い。ある種スポーツのように汗をかいて味わうというよりも、親しみやすい入り口とじっくり味わう繊細さで惹きつける感じか。

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 頼んだのはサラダバーと食後のお茶、そしてデザートがついたセットだったので、京番茶とチョコレートケーキをカレーのあとにいただいた。カレーに番茶って意外と合うのね……とよくわからない感慨に包まれた昼下がりであった。

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 ちなみに「強い女」のとなりは、ファミリースナックの「つよいみかた」。ここは子供連れでも入れるカラオケスナックをめざしてつくられたそうで、新宿ゴールデン街を渡り歩いた経歴を持つママが賑やかに出迎えてくれる。もはやここでは酒を飲んで楽しかったなあみたいな感じになっていたのでレポートにはならない。すみません。でもカレー食ったあとに流れで一杯酒のんでわっはっは、みたいなの、どんな平和な午後だよ、と思った。

 いろいろとおもしろいし気になるところが多かったから、「強い女」って名前の由来についても訊いてみたんだけれど、直接的な由来は秘密、とのことなのでここには書きません。でも、「強い女」という名前が時代の風を読んだ結果ってわけじゃなくて、店主が仲間と店の構想をふくらませるうちにたどりついたフレーズだったのは面白かった。店内ではずっと女性のフォークシンガーの楽曲が流れていて、それも「こういう人たちの曲が流れているようなお店っていいよね」という彼女たちなりの理想を求めた結果だという。

 まあ、要はどれもこれも、やりたいことを好き勝手やってるだけなんだけど、それが絶妙に「強い女」っていう店名に説得力を与えていた。店主はちょっと童顔で、京都育ちゆえか言葉遣いもぱっと聴いただけだと柔らかい。でも凄く芯があって野心があって、「こういう強さっていいよな」と思える。冗談めかして「『強い女』って言って出てくるのが私みたいなのだと、『どこが強い女なん?』ってなると思う」と言っていたけれども、とんでもない。こういう強さを胸張って強さと言える世の中にしてくんだよ君らとかおれらがさ、と思った。

Published in Japanese